△ 2021-03-29 01:55:20 |
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(いくぞ、と声を掛けられ小さく頷いた後身構える。耳元でぱちんっと大きな音が鳴ると同時に鋭い痛みが耳朶に走った。思わず眉根を寄せて身体を固くしたがあやすように頭を撫でられたのと直前まで保冷剤で冷やして痛覚を鈍らせたおかげが次第に痛みは収まっていく。ふと鏡を見てみると耳朶に光る銀色の飾り。わざわざ特殊な道具で健康な皮膚に穴を開けるなんて何とも不思議な話だが何処か儀式めいてもいて興味惹かれたのだ。本来傷を受けた皮膚はその部位を埋めようと修復し始めるがそこをずっと金属などで塞いでいればやがて異物を除いて傷が塞がり穴が出来る。安定してしまえば暫くはそのまま残り続け、定期的に処置をすれば一生塞がることはない。彼に伝えては無いがその点に背徳的魅力を感じたのも事実。自分でもそっと耳元で光る銀色に触れる。動かす度にズキっと走る痛みは確かな救いだった。)
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