吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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(アルコールの熱は体内に留まったままだったが、もともと酒に強い事もあり足元が覚束なくなる事は無かった。相手と共に歩いた路地裏、少し冷えた夜の空気は上質なコートを着ていても肌に多少の寒さを感じさせるもの。やがて賑やかな通りへと出ると、その明るさにほんの少し目を細めて。暗く静かな場所で、目撃者もなく行われる吸血鬼の狩りへの恐怖から逃れつつ夜を楽しめるようにと作り上げられた明るい夜の町。ネオンに彩られたこの場所は安全だと信じきっているのだろう、吸血鬼の脅威などなかったかのように恐怖とは無縁の楽しそうな姿を眺めつつ相手と並んで歩いて。)
…そうだね、雲が無いから一層綺麗に見える。
(相手の言葉に促される様に空を見上げると、煌々と輝く大きな月。その眩しさに僅かに目を細めつつ、満月が近い事を感じて頷きながら。明るい月を瞳に映していると喉の渇きが酷くなり心拍数が上がる様な気がする、この妙な高揚感に突き動かされてしまうのが満月の夜なのだろう。血で身体を満たしたい、この渇きを癒したいという欲が身体の中に渦巻く様で、少しして月から目を逸らして。
賑やかな大通りを過ぎた頃、突然咽せ返るような血の匂いがした。近くに吸血鬼がいる、と察したのと同時にこの時ばかりは彼が隣に居ることを悔やんだ。1人で有れば足を止める事もなかっただろう。彼と共に討伐に立ち会っても自分が同族だと気付かれる可能性もある、それを彼の前で指摘されでもしたら。その上濃い血の匂いは今はあまり嗅ぎたくない。近くに吸血鬼が潜んでいる事に気付いて居るだろうかと、相手に一瞬視線を向けて。)
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