吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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そうか。・・・またな。
(どこか影のある微笑みを受けつつ、相手の背中を眺めてひらりと手を振って別れを告げる。しばらくの間Barの扉を見ていたがくるりとカウンターへ向き直す。自分は仕事を終えているし、カクテルもまだ残っているためもう少し店内に留まろうと考える。カウンターに残された煙草の吸殻が多くある灰皿に目を向けると僅かに残った匂いにくん、と鼻を鳴らして、グラスを持ち残りを口に含む。すると煙草の匂いが上塗りされ、甘く酔うような匂いが口の中に広がっていき思考を塗り替えていく)
なぁ、さっき俺の隣のヤツが飲んでたの、くれ。
(飲み終えたグラスを奥へと押しやり、注文する。なぜそんな注文をしたのかは分からないがなんとなく、飲んでみたくなった。ついでに軽くつまめるものを頼めば味わい深く楽しめそうな肉乾物とチーズがサッと出てきて指で摘んでいると、次いで出てきたのは白色のカクテルでバーテンダーはコンテッサの名前を告げる。グラスを持ち上げ口付けるとフルーティーな味わいが広がり、こういうのが好きなのかと思案すると、しばらくその心地のいい空間を楽しみ、明け方が近くなってから店を後にする。
いつもより多くアルコールを摂取したからか家に帰り布団に潜り込めばすぐに眠気が襲ってきて昼過ぎまで惰眠を貪る。起床してから適当に容姿を整え道中で食べ物を買い、食べながら拠点へと向かう。拠点ではまた西側エリアで吸血行為があり、若い女性が被害にあったということが報告書に上がっていた。西側エリア、との言葉に確かクラウスがパトロールしてくれていたところだと考え回収された遺体を確認する。もしかしたらクラウスが見かけたことのある人物かもしれないし、何か吸血鬼の痕跡が残っているかもしれないと考えたからだった。霊安室に置かれた遺体は青白い血の気のない女性でいつもと変わりはない、ただの遺体。特徴的な容姿もなく、確認しても無駄かと首元にかかった髪の毛をかきあげれば2つの丸い牙の吸血痕と、ふわりと僅かに香る煙草の匂い。だが、人間に紛れて潜む吸血鬼の中には煙草を吸う個体もいると記憶していればすぐに忘却の彼方へと放りさって。霊安室を足早に去ると、今夜の任務も任務を確認する。今日は南側のエリアを掃除するということでBarからは少し遠くなることを考えると残念そうにため息を零し夜を待って)
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