吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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(興味本位で何気なく投げ掛けた質問だったが、思い掛けない返答が返ってくると思わず一瞬手を止めて。愛する婚約者を吸血鬼に殺されたという彼は、きっと吸血鬼に対して人並み以上の激しい憎悪を抱いている筈。今は穏やかに此方に向けられた暗いブルーの瞳も、仮に己の正体がバレる事があれば怒りと憎しみに彩られるのだろうか。同時に、これまでに自身が喰らってきた人間も、誰かにとっての大切な人だったのだろうとぼんやりと思えば、いつもより深く煙を吸い込んで。彼の言葉には少しの間を置いて申し訳なさそうに眉を下げつつ同情の言葉を口にして、無礼を詫びて。)
──…そうだったのか、…それは辛い思いを。ごめん、不躾だったね、
(2杯目のカクテルを頼みつつ、ふと彼の愛した人の血はどんな味がしたのだろうかと思考が逸れる。彼の語る哀しい過去を聞いても内心は妙に冷静で、同時にこんな残酷な事を考えている自分は、憎まれて当然だと思いながら短くなった煙草を灰皿に押し付ける。煙草を手にしていなければ落ち着かず、早々に新しい一本を取り出し指で弄りながら、自分がこの姿のままの人間のハンターだったのなら、善良な心を持ち、吸血鬼に襲われ命を落としたという彼の婚約者を心から悼む事が出来ただろうかと考えていて。)
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