吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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──…テオ、
(不意に扉をノックする音がして顔を上げる。自分を訪ねてくる人などこの街には居ない筈、唯一居るとするなら彼だと、立ち上がり玄関に向かうと扉を開けて。まだ体調は万全とは行かないだろうが、立っていたのはいつも通りコートを羽織った相手で、視線が重なると思わず相手の名前を呼ぶのと同時にその肩口に顔を埋め、しがみつくように相手を抱き締めていて。初めて彼を失うかと思った、あの日路地裏で倒れていた血の気のない彼と、自分の腕の中で事切れた女性とが妙に重なってしまい苦しい日々を送っていた。自分で彼を介抱する事もせずに立ち去ったあの夜。回復した相手と対面した事で、ようやく安堵が溢れて居ても立ってもいられなくなったのだった。)
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