吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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(路地裏で吸血鬼達の動向を眺めるうちに、噂を広めた男の名前を耳にした。彼は、自分がハンターを殺し彼に成り代わって生きている事も知っている旧知の仲の吸血鬼で、その名前を聞いた瞬間に全ての辻褄が合った。恐らく彼は、自分がテオとつるんでいるのを見て、上質な血を提供する吸血対象として側に置いていると思ったのだろう。或いは、人間と深く関わる自分に対する警告の意味が込められていたのかもしれない。何にせよ、自分が発端でテオの命が狙われているのだと知り心中は穏やかでは無かった。
その夜、偵察も兼ねて特に被害の多い地域を歩いて居れば、近くで銃声が響いた。彼かもしれない、と足を早めてその場へ向かえば、嫌な予感は的中し複数の吸血鬼に囲まれ首筋から血を流す相手の姿があった。近づけば吸血鬼たちは直ぐに自分が同族であると気付くだろう、しかし彼の顔色を見る限り今この場を離れれば彼は死ぬ。激しい怒りと、葛藤と、更に濃く香る彼の血の匂いが衝動を沸き起こさせ呼吸が浅くなる。)
──っ、テオ!!
(吸血鬼の1人が再び彼の首に噛みついた瞬間、思わず彼の名前を叫んでいた。腰から引き抜いたサーベルを吸血鬼の心臓に突き刺しては、はじめての嫌な感覚を握った手に感じていて。同時に周りの吸血鬼が振り向いた時には彼の血の匂いによる衝動で瞳が紅く染まり、同族だという事は隠しようのない状況になっていた。せめてこの姿を彼に見られないように、この場で正体を明かされる前に全員を殲滅しなければと着ていたコートを手早く脱いで彼の視界を遮るように倒れた彼に向けて投げる。「お前、!」と一人が声を発したのを皮切りに続け様に吸血鬼の心臓を貫き、程なくして3人の吸血鬼も命を落として。
静かになった路地裏、すぐ様彼の元に駆け寄り手当てをするべきだったが、未だ濃く香る血の匂いがそれを阻んだ。湧き上がる衝動をなんとか抑えながらも瞳の色は元には戻らない、今彼に近づけば自身の手で彼の命を奪う事になりかねない。「テオ、頑張れ。すぐ戻るから。」と自身が掛けたコートで顔は見えないものの、相手に声を掛け路地裏を出ると近くにいたハンターを呼ぶ。自身の瞳の色を知らない人間で有れば不審に思われる事もないはず。彼の元に複数のハンターが向かい抱き起こすのを見れば、自分は其処に戻ることはなくその場を離れて。)
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