吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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(遠くで優しい声が聞こえた気がした。微睡の中でふわりと心地の良い香りが揺れると、酷く安心するような穏やかな気持ちが擽ったくて、緩りと寝返りを打つようにシーツに顔を埋めて。
漸く目を覚ましたのは、相手が目を覚ました数時間後の事。ふと瞳を開くと柔らかな朝の光がカーテンの向こうを照らしていて、横になったまま体勢を変えて部屋の中の様子を窺う。ソファーには毛布が置かれていて、自分がベッドを占拠している事に気付くとやはり相手は自分を気遣ってソファーで眠ったのだと理解して。今は何時だろうか、よく眠ったためかまだ意識はぼんやりとしていて小さく欠伸を漏らす。ここまで深い眠りに付けたのはいつ振りだろうか、朝は苦手だったが珍しく心地良さを感じていた。相手の姿はなく、もう少し眠って居ようかとモゾモゾとシーツに包まると、ふわりと香ばしい珈琲の香りがしてぱちりと目を開く。ベッドの上に身体を起こしてキッチンに視線を向けると相手の姿があり、思わず表情を緩めてしまいながら声を掛けて。)
──テオ。…おはよう、寝坊した。
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