吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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(結局その日、相手は現れず自分は家に帰宅した。その次の日も、そのまた次の日もBarに訪れたが、相手は現れることはなかった。拠点の聖堂に相手の遺体が並ぶことはなかった為、吸血鬼に殺されている訳では無いことは分かっているが、心配ではあった。同時に吸血鬼による女性被害者倍増の報告が耳に入る。元より女性被害の件数は男性より多かったが異常な上がり方で上層部も吸血鬼側でも何かがあったのだろうかと噂しているらしい。夜のパトロールも厳重に行うよう指示が出される中、Barに現れない相手に長期の任務が入ったのだろうか、それともあの会話が相手にとって良くないものだったのだろうかと、モヤモヤとした気持ちを抱えて日々を過ごしていた。今夜は相手が来るだろうかと僅かな期待と、多分今夜も来ないだろうという寂しさを持ち、毎夜Barでカクテルを飲んで過ごしている。
いつの間にか空には満月が輝き、欠け、相手と会えなくなってひと月が経っていた。吸血鬼側では厳重なパトロールで人の血を吸いにくくなり、飢餓状態になる個体や、吸血鬼同士でグループを作って人を襲うなんていう事件も起こりやすくなっていた。そしてその日は運が悪くも討伐する少人数の吸血鬼グループに飢餓状態の個体が多く、そう簡単に討伐出来ないくらい暴れていたのだった。飢餓状態になるとリミットが外れるのかその力やスピードは倍増し誰彼構わず攻撃する。自分も同僚を庇い腕に噛みつかれてしまったり、背中を強く打ってしまって、身体中が痛い。何体かは討伐したもののリーダー格の個体はまだだったし、庇ったはずの同僚は見当たらない。はぐれたか、逃げたか、どっちでも良かったがまずは目の前の個体に集中して自分の血の匂いで他の吸血鬼が現れないうちに討伐しようと引き金を引いた。)
・・・・・・。
(ピクッ、と指先が動いた気がして目を開ける。どうやら最後に討伐した吸血鬼が死に際の馬鹿力で腕を振り回した時に頭をぶつけ脳震盪を起こし気絶していたらしい。目の前には吸血鬼の遺体がゴロゴロと転がっており、周りには生きている吸血鬼の気配はない。深呼吸をして体の力を抜くと体勢を変えて仰向けになる。夜空を見ればもう日は跨いで何時間か経っているようで輝く星は少ない。「・・・つかれた・・・」と呟き手の甲を額に当てればぬる、と気色悪い感触がして顔を歪める。いつの間にか切っていたようで、この姿を相手に見られたら小言を言われそう・・・と考えつつ、どうせ会えないのだから構わないとも思えてくる。暫くは寝転がっていたがゆっくりと体を起こし適当に足を進める。どうせ現場の処理は職員がやってくれる。そうぼんやりと考えながら歩いていればいつの間にかBarの扉が見える位置まで来ており、無意識って怖い・・・と立ち止まる。こんな大怪我した状態では入れるわけない、と今夜の入店を諦めると体を翻し、壁に手を付ながらゆっくりと歩き出して)
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