猗窩座 2021-03-06 09:21:59 ID:35ffca745 |
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(ゆったりと流れる安寧の時。ほっこりと身体の芯だけでなく心も温かいのはきっと日本酒の所為だけではないだろう。黒一色でシーツから枕まで統一されたベッドに身体を埋めて目を閉じれば、先程まで見上げていた星空が目蓋の裏に浮かぶ。同居人の其処と打って変わって此方の酷く簡素な部屋には己の眠るベッド、焦げ茶色の木製天板を用い 黒のスチール製の脚が付いたシンプルな作りのデスクと、同じ素材のローテーブル、そしてこれまた同素材のスチールラック。此れには特に物が置いてある訳でもなく、普段使いの細かなアクセサリー類や、己の名前が刺繍された学生時代の思い出の黒帯やミサンガ、仕事や趣味の本が数冊。極め付けは額に入れられるでもなく、素の状態で一枚だけペラリと置かれた写真。過去に一枚だけ奇跡的に己の父と煉獄家の面々が同じ写真に収まった貴重な物。閑散として秒針の音すら響かないこの部屋で寝返りを打てば、布が擦れる音と、刹那、伸びやかでいて溌剌な男の声――、)
――ン、…………んン、…。起きてる…待て、今行く……。
(分厚い遮光カーテンがびっちりと閉められた部屋は一筋の朝日も許さない暗闇。昔から朝に‘弱い’己は不思議と陽を浴びるより暗闇で覚醒した方が目が冴える。然も今日に限っては楽しみが待っているのだから眠気こそあるが目覚めも良い。呟いた返事は扉の向こうの彼に届くことはないものの、静かに布団の中で伸びをしながら起床に向け精神を整えて行き、)
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