猗窩座 2021-03-06 09:21:59 ID:35ffca745 |
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(形容し難い冷汗をかくような嫌な夢、それを最も容易く楽観的な思想と受け取る彼の言葉に濡れた衣を羽織ったような感覚はすっと消失して、代わりに安堵感が火種ようにそっと胸の内に宿る。この清濁併せた世の中でも良かったとそう思わせるように。僅かに緩んだ口角、瞑る瞳の裏側には家族や彼との思い出が色鮮やかに蘇り、いつしかの夢の事など忘却の彼方へ。今は真横で温もりを分かち合うこの男と安寧の時を噛み締め、夢と現実の間を漂い。上弦の月は二人を照らしながら少しずつ西空へと移動し、随伴の如く星々も空を流れ、時刻は夜明けに近付いて行く。夜明けになるにつれて清らかな外気も冷え込み始め、幸い酒による火照りと密接した互いの体温を分け合っている事で悪寒を感じる事はなく、太陽が顔を出す前に目を覚まし。己の肩に凭れかかる柔らかな頭髪を見下ろして瞳を細め、今一度撫でようかと片手を伸ばすも、数時間前、対等に察しろと不服な犬の姿を見たような気がしてぴたりと腕を止めて。このまま陽が登るまで眠っていれば流石に体調にも影響が出るだろうと、頭の代わりに肩を軽く叩き。)
付き合わせて悪かった、恐悦至極、随分と心地が良かったぞ。
(酔いは覚めているようで、随分とすっきりとした顔立ちで彼の顔を覗き込み、普段と変わらず口角を釣り上げて自信に満ちた笑みを浮かべ。)
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