匿名さん 2021-02-24 23:00:36 |
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マスター:
(暗示に掛けられている間の会話は、物語に別のページが差し替えられたかのように脳内で上書きされる。そして暗示が解けたその瞬間、相手に目の焦点が合ったことが正気に戻った証拠。何事もなかったかのように口を開き「また何かありましたらお聞き下さい」と暗示前と変わらぬ愛想の良い微笑を湛えてガチャリとドアノブを捻ることだろう。軋む音をさせて扉が開いた先は、不気味な仄暗さが漂う室内。「ごゆっくりどうぞ」と丁寧に会釈して)
秋月楓:
(怪異が好みそうな仄暗い部屋。壁に飾られた絵画や大きな鏡を縫うようにキャンドルを模した間接照明が飾られ、テーブルと椅子の影が長く伸びている。目に見える出入り口はあの黒い扉だけだった。そこへ駆け込むには此方を冷たい瞳で見下ろす見張り――隣にいる狼男の隙をついて逃げ出す必要があったが、この相手を出し抜くには厳しい状況にある。最初に抵抗した時点でこの男とはあまりに実力差がかけ離れていると既に理解していたし、身体には数箇所打撲の痕が滲み、言霊を紡ぐ口はテープを貼られ、手首はロープで縛られていて。これから自分はどうなるのかという襲い来る不安に白い床を見つめる中、ふと扉の開閉音が響く。そこに見えた人の姿は見慣れた人物で大きく見開いた目の奥が熱くなる。なぜなら彼は心の中で何度も呼んだ人だったからだ。たった一人の自分の大切な人だったからだ。じんわりと涙で視界が揺れる中小さく息を吸って。
――一方、狼男はそんな自分の姿を恐怖心から来るものだと勘違いしたようで愉快そうに笑んだ後、『お客様は貴方でしたか』と意外そうに相手に言葉を掛けて)
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