__MY ONE AND ONLY．

　

隣に越して来た五条です。御挨拶、に……（扉の先から聴こえたのは何処か聴き馴染みのある甘やかな声だった。まさかな、なんて思いつつも頭の中用意しておいた挨拶を笑顔で口にしようとして――はたと止まる。惚けたまま固まる表情は、それでも目だけは大きく見開いてゆく。心臓はいっそ痛いくらいに脈打ち、喉からはひゅうと枯れた音が出る。…視界の先に居るお隣さんはずっとずっと、それこそ赤子の頃より探し求めていた‘親友’だった。特別な能力など無くとも目の良さは変わらない。魂が強く訴えてくる。彼は、彼だ。夏油傑その人だ。情報が完結しないとはまさにこの事で、現状を理解しても次から次へと疑問が浮かんで理解し切れない。なんで、どうして。その場で立ち尽くし手土産入れた紙袋をぎゅうと握り締めたまま、次に零れたのはまともに意味を成さぬ震える声だった。）

すぐ、る？…　傑、なんで、…

　

すいません、どこかで……？（来たのは、宅配業者でも勧誘業者でもない、新しく引っ越してきた隣人。柔らかな笑顔で手本のような言葉を紡いでいたが、自分と視線が合うと瞳を見開いたまま硬直してしまう。はて、と首を傾げて瞳を丸くしていることしかできない。自分のことを昔から知っていたような、会いたかったと声から滲み出しているような言葉を紡ぐ彼には申し訳ないが、自分の前にたつお隣さんに一切の見覚えがない。はたまた、テレビで似たような人を見たことがあるぐらいだ。変わった人なんだな、と自分の中ですんなりと認めてしまえば、言葉だけでは申し訳なさそうに眉を下げ、やんわりとした謝罪を口にして。）


　

　

あ、……や、昔の知り合いに似ていたもので、つい（この場では一先ずそう誤魔化すしかなかった。例え記憶が無くても見つけた以上は逃がしてなんかあげられない、本当にごめんね――そんな言葉を伝える代わりに一言‘すみません’と断りを付け足しては寂しさ隠す如く目を伏せた。次いで再び笑顔を取り繕ったなら仕切り直すように「五条悟といいます。コレ、つまらないものですが良ければ」と握り締めていたままだった紙袋を差し出し 静かに反応を伺う。これからどうアプローチしていくべきだろうと思考を巡らせ。笑顔の奥に執着の熱を滾らせながら、それでも敢えて控えめな態度でおずおずと質問を続け。）…お名前、聞いてもいいですか？

　

ああ、わざわざすみません。蕎麦好きなんです。有り難く貰いますね。（　自分に似た知り合いがいると言うお隣さんは、少し変わった人なんだろうと考える。仮に似ていたとしても、知り合いと会ったぐらいであんなにも声を震わせることが自分にはないと思っていたためだ。これから近所同士絡むことも多くなるだろうから、印象は悪くできない。軽く笑って話を流せば、次は紙袋が渡されて。ちらりと紙袋の中を覗く。中にあるのは、自分の好物である蕎麦で。小さく、おお、と歓声を上げる。紙袋を右手に持ち、浅くお辞儀をすれば笑みを絶やすことなく礼を告げ。控えめな、遠慮しているような様子で自分の名前を訊ねる相手はどこか様子を伺っているようにも見える。何だが態度に違和感を覚えつつ、質問にはさらりと答え。　）

夏油傑です。宜しくお願いします。


　

　

げとーすぐる……傑さん、ね。蕎麦喜んでもらえて良かった。此方こそ、これから宜しくお願いします。（ 容姿のみならず名前まで変わっていないことがわかれば情報はもう十分、この調子なら性格だって変わっていない筈だと確信が持てた。蕎麦好きも相変わらずで何よりだし、そんな反応も微笑ましくて可愛いと感じさせるんだから本当に狡い男だよね、傑は。此方の問いへ返された自己紹介に耳を傾けながら、口にはしないが頭の中ぼやいてみせる。次いで練習する様にぽつり彼の名を反芻、馴れ馴れしくもしれっと名前呼びで話を進め 目的の挨拶を済ませて。…しかし、折角出逢えたばかりなのだから離れるにはまだ惜しい。もう少し一緒に居る為理由を頭の中で作ろうとして――はたと気が付いたことが一つ。唇尖らせ頬を掻くと もごもご決まり悪そうに口を開き、困っている点と要望を静かに提示。最後は縋るように今にもクゥンと鳴きそうな捨てられた犬の如きあざとい上目遣いを行使してみせ、）

あの、さ。……僕、越してきたばっかでこの周辺のコト全然わかんなくて。その、迷惑じゃなければ散歩ついでに案内してくれないかなぁ…とか、思ってるんですけど。……ダメ？

　

もちろん良いですよ。私もそこまで詳しいとは言えませんが…それで良ければ。
（　初対面を親しく名前で呼ぶのは計算なのか、それとも無意識なのか。親しみがある分には困らない為、特に口出しもせず彼の様子を見守り。暫くすれば、やはり遠慮しがちな雰囲気でおずおずと此方へと話し掛けてくる。何を遠慮しているのだろうか、ただ疑問を頭に思い浮かべれば愛想良さげに彼のお願いを頷きながら聞く。仕事が全ての自分にとって、町はただの通り道に過ぎない。だが、それなりに知っているはず。役に立たないかも知れないと遠回しに伝えつつ、了承をすれば子犬のような瞳をする相手のお願いを断れるはずがないなと思わず苦笑して。　）


　

　

ほんと！？――…っしゃあ！
（ ぱっ、と笑顔が花を咲かせる。此方から縋ったとはいえ知り合ったばかりの人間へこうも容易に優しさを向けてくれるとは。有難く思うと同時に頭の片隅では不安も過ぎる。こうやって俺の知らない所で他人にも愛想振り撒いてんだろうなー、なんて。…まあそんな思考は兎も角、快い了承の言葉が得られたなら弾けるような歓喜の声を上げた。その後直ぐに照れ臭くなって思わずはにかみ笑えば「……へへ、ありがと傑さん」とひとつ感謝の言葉を紡ぐ。さて、そうと決まればこうしている時間が勿体無いか。頭の中ですべきことをリストアップしたなら続けて彼に提案を。）
ちょっと用意とか買いたい物とか纏めてくるんで……そうだな、今から一時間後に出掛ける感じでもいいですか？

　

すまない、少し返事が遅くなりそうだ。土日には返せると思うから、待っていてくれると嬉しいよ。


　

　

おー、了解（こくこく、）　俺はのんびり気長に待ってるしさ、無理せず手隙の時に返してくれればいいから。わざわざ伝えに来てくれてありがとな、傑（にっ、）

　

　

一度上げておくね。僕はご覧の通りのんびり待ってるからさ、気が向いたらまた声掛けて（ 僅かに眉尻下げた微笑み浮かべ、微睡むようにゆったりとした瞬き繰り返し ）

　

…悟、まだ待ってくれているかい？なんて薄情なやつだね、私は。（ こんこんこん、と数回扉をノックすれば顔を覗かせ。ゆっくりと床へと腰を下ろし貴方の帰りを待つように、扉へと視線を向けて。 ）


　

　

…ん、あれ。鍵開いてるじゃん、僕閉め忘れたっけ…（ 鍵を差し込み回したなら思わずきょとり。一先ず引き抜けば恐る恐ると中を覗き――途端瞳を見開く。パッと華やぐ笑顔を浮かべ、）傑、おかえり～！　…待ってたに決まってんじゃん、すっごく会いたかったよ。

　

悟…！居てくれてよかった。本当に安心した…なんて私から出ていったのに。（扉が開くのを確認すれば、あなたの姿を瞳が捉える。真っ先に名を呼べばあなたの頭を撫で。）


　

　

ん、…傑の手 気持ちいい（ 感じる心地好さに眉下げたなら感想をひとつ。徐ろに歩み寄ってふわりと広げた両腕で彼をぎゅっと抱き締めては、）僕も――…俺も安心した。帰って来てくれて嬉しいよ、傑。元気にしてた？

　

元気だったよ。悟は元気だったかい？
（ 自分の体調はいつもと変わらないと笑みを浮かべ貴方の様子はどうだったかなと抱き寄せられながら首をかしげ ）


　

　

勿論！…て、言いたいけど最近忙しくてさ。仕事終わっても寛ぐ時間あんまり取れないし食欲減退中～。助けて傑（ いつもの巫山戯た調子で返答しつつ、けれども甘えを見せるようにその首筋へぐりぐり鼻先擦り寄せ。）

　

助けてって…ちゃんと食べなさい。私が何か作ってあげようか。( 貴方のあっけらかんとした様子に安心しつつも、食欲減退との言葉には眉を下げ。べったりとくっつく貴方の頭をそっと撫でれば、ご飯を作ろうかと提案をして )



　

　

……傑の飯なら食う。何作ってくれるワケ？（ 心配してくれるのが嬉しくて、けれど心労はかけたくなくて。そっと声色を落ち着かせたなら抱きついたまま緩々と顔を上げ、 無垢な瞳で以て彼を見詰めつつ。）

　

どーも、こんばんは～（ 手をひらり振りつつ姿見せては ）あちこち任務に駆り出されてる間にかなりの期間が経っちゃったし、悪いけど一度お相手はリセットさせてもらうわ。そんでまた改めて俺の親友を募集すんね。詳細は>1にある。ちゃんと目を通してから声掛けてよ。……俺との約束、優等生の傑くんなら守ってくれるでしょ？（にい、）

　

傑どころか硝子も寮に居ねーし。…ンだよ、俺だけ除け者みたいじゃんか。……つまんねー（ 自室で独り。こんなことなら同じ様に任務が入っていた方がまだマシ。寂しんぼで悪かったな、なんて脳内の親友へ内心悪態を吐いてみせる。いじけた様に唇尖らせ机にぺたりと頬を乗せては意味も無くカチカチと携帯弄り、切なげに細く長い溜息を零し。）――まだまだ募集してるから早く来いよー。でないとオマエの部屋へ勝手に入り浸るからな。ついでにベッドの下とか漁っちゃうからな！（ふふん、／）