名無しさん 2021-01-12 19:16:08 |
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菫のような年頃の少女というのは、多少の汗を気にしたり、どこのブランドの乳液が良いだとか、乾燥が気になるだとか、可愛い自分を保つために必死な姿も愛らしいものだ。しかし菫には唇や手のヒビ、埃を被ったようなフケだらけの頭を気にするような余裕はなく、今も男性の後ろで風呂の説明を聞いているのは、「シャワーでも浴びてて」と言われたからである。基本、自発的に動くことのない彼女の行動原理は他者に依存しており、風呂に入るなと言われれば皮膚の痒みも我慢してじっと座ったままだっただろう。実際に説明を聞く気があるのかないのか、まるで背後霊のように男性の後ろに立ち、男性の動きに合わせて一応目を動かしてはいるがその表情は依然として能面のようだ。
男性の問いかけは聞いていなかったのか、言い終わったタイミングでピシャリと乱雑に扉を閉めた。早速、適当にナップサックとセーラー服を脱ぎ捨てて浴槽の中へ入る。最初に蛇口ハンドルを捻ると出てきた水の冷たさに身体を震わせ、徐々に温かくなっていく湯をがぶ飲みした。ここに来る前から、いつも喉の渇きを癒すのはシャワーの水。何度も喉を上下させ、しばらくして腹が張ってきた感じがするとシャワーヘッドから口を遠ざける。濡れた手の甲で口を拭って、ふぅ、と小さく一息。
(/長くなりそうなのでこの辺りで一度止めておきます)
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