幕間 2021-01-01 14:36:36 |
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>蓮太郎
……いや、……おまえこそこんな早く来て偉いな。
( 目の前の顔が戸惑った顔をするので、誤魔化すようにぽんと頭に手を置く。弟とは大違いだな、とは思うものの、やりたくない事を強制するつもりは無いし、あまり悲観もしていない。ただ、弟がそんな調子であることによって目の前の彼がより熱心に映ることもまた事実で、相変わらずの感情の読めない顔のまま、わしゃりわしゃりと髪を撫でた。 )
>蓮太郎の従妹
( 嬉しそうな顔から笑顔が消え、悲鳴のような声が体育館に響く。彼女が心配して駆け寄って来てくれるも、『女子中学生に身体を支えられる男子高校生』という何とも情けない構図が完成してしまっていることも気に留めず、保健室まで付き添ってくれるという心優しい言葉も耳に入っていない様子で顔を上げる。……いい事を思い付いた。 )
なあ、生命の危機を感じる時ってどんな時。物質的にでも社会的にでもいいんだけど。
>仁
……仁。喝入れてもらったとこ悪いんだけど、頼みがある。
( 部活へ行くという気力だけで立ち上がったものの、髪を乱されただけで軽く足元がふらつく。どうやらすぐそこまで限界が迫って来ているらしい。のろのろと立ち上がった自分とは対照的に、無駄のない動きで動きで立ち上がった隣のそいつを見上げる。俺より身長が高く、体格も良い同級生。彼の問い掛けによって、『そうだ、今日次の公演の題材を決めるまで力尽きるわけにはいかない』と、演劇以外の全てを投げ捨てると、「部室まで運んで」と臆面もなく言い放った。 )
>江
( 俺が声を掛けると、綺麗な形の瞳がこちらを向く。……向いている、はず。しかし、彼女は一向に問い掛けに対する答えを返そうとせず、ただただこちらを見つめるばかりだ。至福の時間を邪魔したことを無言の圧力で咎めているのか、それとも、もしかして俺のことを分からないのか。この短期間に一体何が、と、思わずこちらも見つめ返したまま妄想の世界へと旅立とうとしたところで、ふいに薄い唇から声が発せられる。無言で見つめられるのも反応に困ったけれど、食べかけのクリームパンを差し出されるのも多分に困る。もし、ここで何も気付かない振りをしてそれにかぶりつきでもしようものなら仁に殴られそうだ。それもグーで。しかし、あからさまに拒否するのも彼女の厚意を無下にするようで気が引ける。幸い、どうしようかと俺が考え出す前に問題のそれは引っ込められたため、万事丸く収まったわけだけれど。『美味しいクリームパンは売店で売られているもの』という情報を得た俺は、今にも走り出しそうな彼女に向かって普段通りのマイペースな口調で告げる。 )
うん、じゃあ、俺も一緒に行く。
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