匿名さん 2020-12-31 14:42:53 |
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(強く発された声にびく、と肩が大きく震え、獅子に睨まれた鼠のような心地になる。耳に届いたその言葉には、怒り、諦め、そして一種の嫉妬すら滲んでいるような気がして。
なぜそこまで怒るのか、なぜそこまで自分が “本当に” 彼を愛するようになっていたことを信じてしまえるのか。彼は愚かだ。──だが、自分はもっと愚か者だ。そう思ってしまった瞬間感情を制御できなくなり、目に熱が盛り上がって。)
私には、それしかないからよ。それだけが私を守ってきてくれたわ。
ジーク……あなたと私は、生まれた世界が違い過ぎる。一緒になるなんて、ありえないの……
(──目を閉じ、浅く早く呼吸しながら思い出すのは、ほんの数週間前のこと。偽装娼婦である自分を、既に収監済みの本物の武器斡旋者だと思い込んで始末しに来た殺し屋から、他でもないジークが命がけで守ってくれた夜だった。弾痕だらけのソファーの上で、きつく抱きしめながら無事を安堵してくれた彼の温もりに……あのときたしかに、自分は救われたのだ。
ずっとあの熱に包まれていたかった。そう思ったのは本当だった。目を開け、しかし視線は伏せたまま。ここで別れてしまうなら、せめてほんの一言だけと、「……愛して、いたわ」……小さなか細い声で囁き。)
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