匿名さん 2020-12-31 14:42:53 |
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(心を抉る核心的な言葉に揺らぎそうになるが、だからこそ今一度気力を奮い立たせ、銃口を下ろしながらも灰色の視線をまっすぐ受け止める。男がきっと、保身のために欺こうとしているのではなく、本心からの言葉を囁いていることということは、わかりたくないがわかっていた。
でも──だめなのだ。捜査官として始めたこの日々は、捜査官として閉じなくてはならない。そうでなければこの先をどうやって生きてゆけよう。ジークはマフィアであり追われ人だ、いつ死ぬかもわからない。捜査官としての自分を捨てたのにひとりきりになってしまったら、今度こそ生きていけない。──ジークを愛しているが、自分のそばからいなくならないと信じきることができない。この身も心も、預けきれない。
一度目を伏せ、逡巡し。それからもう一度男を見つめ、震える唇で、しかしきっぱりと嘘の言葉で突き放し。)
……、考え、直さない。私はあなたがいなくても生きていける。今まで……そうしてやってきたもの。元に戻る、それだけよ。あなたも、私を忘れて頂戴。
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