匿名さん 2020-11-18 13:04:59 |
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>Nora
(始めに手にした、まるで辞典のように分厚い本を読み進めてから数時間。本を開いたばかりは数センチ程あった読んでいないページも、気が付けば残り数ページ、と数えられる程になっていた。薄暗い部屋の雰囲気や、騒音の無い、只ページを捲る音と自身の呼吸の音しか聞こえない環境は、本の中へ入り込んでいくのに最適だとも言え。軽く本の中身に目を通しただけなのに、数分と経たないうちにその中に惹き込まれていた。そのため、どの位時間が経ったか、なんて全く意識になく。ガチャリと扉が開く音でふと現実に引き戻され、そのまま顔を上げる。その先には彼女の姿。そして投げ掛けられたその言葉で、やっとこれから外へ出るということを思い出した。彼女の格好を見るに、既に出掛ける準備は出来ているのだろう。自分も早く準備をしなくては。彼女が外に出られる時間は限られている。夜は長いとは言っても、少しでも時間は無駄にしたくない。「準備が遅かったせいで、用事が全部済ませられなかった」はんて事態は最悪、それだけは絶対に避けたい訳で。急いでぱたんと音を立てて読んでいた本を閉じ、自身が座っている右側の床へと置くと、
「有り難う」
と御礼を言ってコートを受け取り。ふわふわしていて暖かく、手触りも心地いい。きっとこれもかなり上等なものなんだ……そう実感しながら立ち上がると、渡されたそれを羽織り。それにしても、このお屋敷は一体──、彼女だけで此処に住んでいたとは到底思えないし、こんなに沢山の高級品、やはり普通の家とは違うようだ。改めてそう実感しながら、するすると袖を通していく。受け取ったコートは少し大きいようで袖からは指先が少し顔を覗かせている。慣れない手付きで上からコートのボタンを嵌めていくと、足元に付いていた埃をはたいて落とし。出掛ける準備を済ませ、彼女の方へ向き直って)
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