匿名さん 2020-11-18 13:04:59 |
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>Nora
(彼女が扉の向こうに消えていくのを視線で見送り、大人しく座って彼女を待つ。__それから暫くして、キッチンへと続く扉を挟んで、何か大きい音が聞こえてきたが大丈夫だろうか。一人ぴくっと肩を上下させると、彼女のいるであろうキッチンに視線を向け。駆けつけた方がいいのか、待っていた方がいいのか、どうしようかと悩んでいるとガラガラと台車の音。彼女の様子を見るに、目立った怪我など特に変化は見られないが……小さく首を傾げつつ、彼女が自分の食事を並べてくれるのを眺めていた。
目の前に置かれたお皿の上に乗った二枚のパンにクッキー、温かなカプチーノからは、食欲が更にそそられるようないい匂いが。美味しそう、なんてついじーっと見てみれば、パンの端が黒く変わっていることに気付く。それに彼女の落ち着かなさそうな反応にその言葉。あちこちさ迷っていた視線が自分に向いたとき、相手を安心させるよう此方も視線を合わせればそっと口を開き
「ううん、大丈夫__」
いただきます、と焦げたパンに手を伸ばし、サクッといい音を立てながら一口齧る。口の中いっぱいに広がるパンの香ばしさとマーマレードの甘み。想像を遥かに超える美味しさで、一口一口を噛み締めてパンを食べ進めていく。多少焦げたところで味も大きくは変わらないし、食べられれば何の問題もない、というのが元路上暮らしだった故の自分の考えで。その他にも、折角彼女が作ってくれたから。どんな食事が出てきても、何も言わずに食べていただろう。だから心配する必要なんて__、そう考えながら小さく口角を上げて、幸せそうにパンを味わう。焦げていたのを何の気にも留めずに一枚目を完食。綺麗に泡立ったカプチーノに口を付ける際、目の前の彼女に視線を向ける。彼女の目の前には自分と同じような美味しそうな食事__ではなく、お洒落なグラスが一つ。中には赤い液体が揺れており、昨日あれだけ説明されても、本当にそれだけで大丈夫なのかな…なんて意味のない心配をしてしまう。そこにはもう、“血を飲む”ということに対しての恐怖は一切消えており。勿論、人間と吸血鬼__彼女の口から直接“自分が吸血鬼だ”という言葉は聞いていないが、こうして人の形をしていて血を摂取する、そう聞いて連想されるものなんて吸血鬼くらいだろう__この2つ、そもそも種族から違うのだ。人間でさえ、生活様式やら生活環境やら格差が生じるのだから、自分と彼女の間に差があるのも当たり前。此れからこの差を少しでも縮められたら__そんな願いを胸に、カプチーノを流し込んでこくりと飲み込む。ミルクのまろやかさにほんのり感じる苦み。丁度よい温度で飲みやすく、じわじわと身体に染み渡っていくのを感じながら、もう一枚のパンへと手を伸ばした。)
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