匿名さん 2020-11-18 13:04:59 |
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>Nora
血……ッ、
(彼女の持つグラスの中で揺れている紅いそれは、ワインでもジュースでもないらしい。思わぬ答えに動揺してしまい、ぴたりと食事の手が止まる…が、また一つ思い出した。“取引”の際に、此方が提供するものはなんだっただろうか…、そう、血である。彼女が自分と同じような人間ではなく、血を主食とする別のもの、例えば__吸血鬼だとしたら。取引の内容も、こんな森の奥深くに住んでいるのも、全て納得がいく。それでもたった一つ疑問が残ることといえば、どうして自分を拾ったかということ。理由は何であれ、彼女は血を欲しているらしい。それも人間のものを。街を探してみれば、人間なんて山のように見つかるだろう、なのに何故、見た目からしてこんなにも不健康な自分が選ばれたのか。只の一般人でさえ、自分より良い暮らしをしているのだ。血の味だって自分の方が劣っているに決まってる。なのに_。
考えても考えても疑問は深まるばかり。ここは考えるだけ無駄だと判断し、食事に戻ろうとする。やはり個人的には彼女には何か食べて欲しいのだが。こうして自分だけ__という妙な罪悪感も感じているが、彼女自身が要らないと言っているのだ。ここは深く追求せずに相手の意見を尊重することとし、少し申し訳なさそうにしながらも食事に戻った。
「__ご馳走さま、でした」
彼女の作った料理、全てを綺麗に食べ終え。ビーフストロガノフも、サラダも。初めて食べるものや、もう何ヵ月も食べていないもの、どれも丁寧に調理されており、もう一年分の食事を摂ってしまったのでは、というほど充実した食事であった。数時間前、空腹と疲れで倒れそうになっていた時と比べると、随分と顔色も良くなって体力も回復し、何か言葉を発するのも苦ではないほど心も落ち着いてきており。徐々に緊張も溶けてきた。こんなに自分に優しくしてもらったのは初めてで…、心が今まで感じたことのない暖かさで一杯になり、簡単に心を開いてしまう。これで意志疎通もより取り易く、口数も増えるだろう)
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