匿名さん 2020-11-18 13:04:59 |
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>Royes
さぁ ,此方へいらっしゃい 。
( 数回 ,空気を食らうかの様に口を動かす貴方から紡がれる御礼の言葉に孤児院育ちとは言え最低限の礼儀は習っているという印象が得られた 。 立っている貴方はとても脆く見えて ,血色も良いとは言えない 。 少しの刺激で膝から崩れてしまいそうだ 。 恐らく空腹と ,慣れない馬車 ,初めての場所に理解が追い付いていないのだろう 。 路地裏暮らしなら其の場から動く事は殆どなく ,尚且つ季節は冬 。 寒い中薄着で街中を徘徊する馬鹿が何処に居るのか 。 そういった面でも歩くことに慣れて無く体力も無い事が分かる 。 今に血を抜いてしまえばきっと数日はベッドから起き上がれない筈 。 そうすれば自身に影響が及ぶのだ 。 よって今から行う事は一つ 。 空腹の貴方に鱈腹食事をさせてあげようという事だ 。 何度も言うがこれは貴方を助けるための行動ではない 。 自身の為の行動だ 。 此処で貴方が倒れてしまえば自身が食事を得られないから ,それだけは避けたいと思えば貴方に向いて居た身体の方向を変え玄関入って目の前の階段の横の廊下を歩き出す 。 その先にある大きな開き戸のドアを開ければ開けた大きな空間 。 その天井には暗めの電球色の明かりを灯す豪華なシャンデリアが目を引いて ,シャンデリアの下には1人で食事をするには大きすぎる程の角形テーブルが置いてある 。 赤色のテーブルクロスをひき ,その中心には熱により蝋がゆっくりとだが溶けていく様子の蝋燭が数個あり ,テーブルを照らす 。 如何やらこんなに広い屋敷なのだが今この屋敷に居るのは貴方含めた二人だけらしい 。 ダイニングに入るとそのまま奥に進んで木で出来た扉を開けてまた中へ入ってしまう 。 叔母が生きていた頃 ,叔母は人間に化けて近くの街の人間との交友を持っていたらしく ,叔母が死んで大して時間が経たない現在は叔母がその人間に振舞っていた野菜や肉などの食材はまだ残っているようだった 。 叔母が振舞う為の食事を作る手伝いはしていた為ある程度の手順は分かる 。 しかし一人で作るのはこれが初めてだった為少しの不安が滲んでしまう 。 が ,その心配は無用な様 。 矢張り手伝いをしていた事もあってか ,慣れた手付きで食材を切って鍋に入れて調理を進めていく 。 あっと言う間に出来上がった美味しそうなデミグラスソースの香り漂うビーフストロガノフと ,程よく溶ける赤味の綺麗なローストビーフ ,温かな湯気の漂うミネストローネスープ ,しゃきっとした野菜のイタリアンサラダに満足そうに小さく息を吐いた 。 我ながら上出来だ 。 ふと時計に視線を向けると約30分弱も掛かってしまっていたらしい 。 今頃お腹を空かせて死んでいなければいいけど何て他人事の様に頭の隅で思い乍それらを乗せたワゴンを押してキッチンから出ていく 。 自身は血以外を食べても無機質な ,紙を食べている様な味しかしないからと作ったのは一人分だ 。 その代わり,祖母の葬式の際に街で買った食用の兎の血を抜いてワイングラスへと移した 。 人間の血に比べれば味も香りも美味しさも何もかもが低いのだが今貴方から血を抜けば死にかねないし ,不健康な人間の血は御世辞にも美味しいとは言えないから ,今回は妥協をするのだ 。ワゴンを押してテーブルの近くへと運んでいけば作った料理を一つ 〃 丁寧にテーブルへと置いて貴方へと視線を向ける 。
〝 御食べなさいな 。 口に合うといいのだけれど 。 〟
そう述べて何処か不安げに瞳を揺らめかせるとカタリと椅子を引いてその椅子に腰を下ろした 。 )
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