朱い契約 ／ 〆

＞Royes


あら ，そんなに警戒しなくてもいいのよ 。 別に取って食ったりはしないもの 。


( 了承はしてくれたものの矢張り未だ何処か裏があるのではないかと疑われている様な感覚さえ感じられる貴方の言動にふぃと視線を逸らし取った手を引き ，歩き乍また何時もの緩急の無い声色で上記を述べた 。 向かう先は自身の屋敷で有るがそれはもう森の奥の奥に佇んでいる為 ，今から歩いて帰るとなるととても疲れるし気は滅入ってしまう 。 きょろ 〃 と辺りを見渡せば何かを探している様子だが暫くして目的の物を見つけた様子 。 何も発さずに方向転換をしてその目的 ，雪が降っているのにも関わらずに がや 〃と賑わう店の傍に見つけた馬車に近寄ると馭者に声を掛け鞄から取り出した袋を手渡す 。 そうすれば馭者は自身等を客と見て馬の後ろの箱 ，キャリッジの扉を開けた 。


〝 乗るのよ 。 〟


自身の後ろに付く貴方に振り返り単簡な言葉を紡ぐと自身は先にと馬車の中に乗り込んでしまう 。 〝 貴方も早く乗りなさいな 。 〟 目まぐるしく変わる状況にきっと困惑してしまっているかな ，そう思ったからかシートに腰を下ろし足を組んだまま未だ馬車には乗っていない貴方に一声を掛ける 。 貴方を見下ろしたまま ，この人間は使い物になるのか何て拾った今 ，今更染みた事を考えていた 。 この歳の雄にしては痩せ細り過ぎだし顔色も明らかに悪い 。 一目見ただけで分かる不健康振りだ 。 そうして光がある所で見れば矢張り全身の凄い震え 。 きっと自身が拾わなければ野垂死んでいただろうか 。 不健康で居られると血は不味いし何より直ぐに尽きて仕舞いそう ，そうなれば余り屋敷から出る事の出来ない自身にとっては不都合なのだ 。 自身の餌になるのなら見た目もしゃんとして欲しい ，屋敷に人間の雄用の服は＿とそこ迄考えたがこの雄を拾う前 ，もう一人食用として拾った人間の雄が居たｯけ 。 その人間は丁度こんな寒い雪の日に屋敷の池で溺れ死んで仕舞ったのだけれど 。 洋服はその人間のを着させよう 。 先程ちらりと見ただけだが痩せてはいるものの顔はかなり端麗だった 。 風呂に入れて食事を与えて睡眠を取らせればかなり良い容姿に成る事だろう 。 別に人間を助ける為ではない 。 自身の餌を美味しくするための一加えなだけ 。 そう思考を巡らせ自身を納得させれば ，また小さく息を吐いて雪の降り続ける街を窓越しに眺めて 。 )