ビギナーさん 2020-11-09 08:35:35 |
通報 |
「愛って、なんだと思う?」
「……世界の中心で叫ぶもの」
最初に答えてくれたのは、クラス1の無気力男・崎村だった。数学の参考書とノートに視線を落としたまま、だるそうな低い声で続けて言う。
「もしくは、ためらわないこと」
「んー、なんかピンと来ないな。澪ちゃんはどう思う?」
隣の席で問題集と格闘している、可憐な美少女に話を振ってみる。澪ちゃんはきょとんとした顔で俺を見ながら、
「えっと、そだなー。見返りを求めないとか? いわゆる無償の愛だね」
「さすが澪ちゃん。優等生的回答だ。崎村も澪ちゃんを見習えや」
思わずスタンディングオベーションした。
崎村は無反応だった。テーブルに顔を伏せて何も言わない。というか寝ているな。
「おいお前ら。今試験勉強中だってこと忘れんなよ」
真正面の席に座っている霧島が、ジトッとした目で見てきた。そうだ、そうだった。放課後、ファミレスで勉強会していたんだった。
俺はそっと椅子に座り、教科書を開いた。
トピック検索 |