名無しさん 2020-10-21 17:10:45 |
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( いつまでも沈まぬ太陽は揺れる灯火となり、やがてコーラルレッドの瞳として像を結んだ後、人ならざる存在であった筈の彼は見知った友人へと姿を変えた。否、彼は元々人間だ。その背後には後輪も翼も無い。塗炭の痛苦にとうとう耐え切れず、ひとでなしとして凄惨な差別を受けた彼をあろうことか人外に重ねてしまったのだ。脈打つような痛みの中で人非人の所業を悔い改める前に、柔くやさしい声に包まれて瞬きを繰り返す。子守唄の如き穏やかな調子で紡がれる言葉が何を意味しているのかは終ぞ理解出来なかったものの、自分は赦されたのだという確証を得た。大脳の内側に空気を震わせる程の雷鳴を轟かせていた激痛の波は徐々に引いて行き、今は遠雷のような疼痛が残るばかり。既に嵐は去った筈なのに、掴みどころのない感情が涙腺を刺激する。見据える先に愛すべき友の姿を捉えたまま、溢れ出る涙を流れるに任せて )
──もう、大丈夫だ。ありがとう、君が私を助けてくれたんだな。にしても、はは、私はどうして泣いているんだ?何も悲しくはないんだが……いや、違う。悲しいんだ。でも、何が悲しいのか分からない。
( 徐に身を起こし、紅潮する頬に幾筋か流れた悲哀の跡を乱雑に拭う。周囲の状況から鑑みるに、相当な醜態を晒してしまったのだろう。心優しい友人のこと、己の惨め極まりない姿を目にして大慌てで処置を行う彼の姿は想像に難くない。遣る瀬無く胸奥を支配する哀愁の影に戸惑いながら、未練がましく神経を刺激する鈍い痛みに米神を押さえ。何か、とても大事なことを忘れてしまった気がする。どんな方法論や計算式にも勝る大切なもの。失われた記憶の空白を引き摺り続けることはとうの昔に止めたつもりだったが、厭に引っ掛かる。若しかすると、現状の研究を飛躍的に進めるようなアイデアだったのかも知れない。持病に葬られた記憶を惜しんで嘆息を一つ、無念を断ち切ると改めて口火を切り )
にしても、何か用があって私を訪ねて来たんだろう?悪いな、介抱までさせて。大変だっただろ、ああいう時の私は手が付けられないから。アンドルーには改めて礼を、……"アンドルー"?なあ、私は君をそう呼んでいたよな?
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