名無しさん 2020-10-21 17:10:45 |
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──っ、触るな!!…ア、ンドルー?す、すまない……そこの抽斗の三番目に、……鎮痛剤があるんだ、二つばかり飲ませちゃくれないか。
( 例えるなら、脳漿に無数の電極が犇いているような感覚。ぎりぎりと歯を食い縛り、僅かに残った冷静な判断力で呼吸を努めて落ち着ける。あまりの痛みにじっとしていられない。周囲に気を配る余裕も無いまま、背に何者かの手が触れるや否や本能的に声を張り上げ。直後、突如として視界に入った相手が友人であると辛うじて特定すれば、激痛の最中淡く滲んだ罪悪感に声が震えた。導火線の如く理性を焼かんとする火の手を、意志という名の精神力を以て無理矢理押さえつける。文字通り這い蹲って縋りつき、震える手を持ち上げて袖机を示して )
……駄目だ!医者の所は!ひ、抽斗の、三番目だから……ッ、ぐ、──あるんだ、机の……痛み止めがさ……大丈夫だから、た、頼むよ、なあ、連れて行かないでくれ……お願いだ!
( 現環境では必然的に担当医となる参加者の名を耳にした刹那、偶発的な災害に見舞われた頭の奥に一片の記憶がちらつく。彼女が医師の責任において投与する薬剤は即効性で、地獄の苦しみからものの数分足らずで己を現実に引き戻す救済の具象だ。とはいえ、福音の先には大きな副作用が待っている。この身を蝕む痛みと一緒くたにして、前後数十時間の記憶までもすっかり取り上げてしまうのだ。様々な可能性を考慮した後、最終的に医師の元への搬送という結論を導き出した彼は正しいのだろう。床に倒れていたのが他者であったなら、自身も同じ判断をした筈だ。にも関わらず、死にも勝る忘却の恐怖に慄き、哀れっぽい眼差しで懇願する様は酷く惨めに違いない。極めて反知性的な判断な理由から合理的な処置を拒み、文字通り頭を抱えて嘆願を重ね )
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