名無しさん 2020-10-21 17:10:45 |
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( 正午以降は実験に肝胆を砕き、夜の帳が下りる頃に漸く頷けるだけの精度を備えた試作品が完成。夕餉の席には顔を出さずに二日振りの入浴を済ませ、鼻唄混じりに自室へ引き返して現在に至る。未だ湿り気を帯びる髪を適当に結い上げ、横目に約束の時刻が迫っていることを確認し。其処らじゅうに散らばる紙屑を拾っては屑籠に放り、拾っては放りを繰り返す。やがて屑籠が溢れ返っても意に介した様子は無く、未完の没作をぎゅうと押し込んで。この部屋を自ら訪れる者は殆ど無く、また滅多に人様を招き入れることもない為に、部屋全体が雑然としていることは否めない。久方ぶりに友人を招くのだから、せめて足の踏み場は作ってやらなければ。一人意気込み、有体に言えば散らかり放題の空間を適当に片付ける。電子管、抵抗器、インダクタにトランス、電子部品は種類毎に小箱に収納。物覚えが悪い為に擦り切れるほど読み込んだ論文集は、枕元から本棚へ )
共振とパルスはこっち、電磁波はそっちで…電界?電離層の隣でいいか。これで粗方の整頓は済んだな、あと、は──…っ?…、……!
( ぐらり、突如として視界が傾く。咄嗟に伸ばした手は書籍群の上部を掴み、今し方終えたばかりの分類はばさばさという耳障りな音と共に水泡に帰した。声を上げる間もなく全身を強かに打ち付け、瞬間、頭蓋を抜けた鋭い痛みに視界が歪む。非常に不味い。今日はまだ、日記を書いていないのに。ここ二週間近くは症状が出ていないからと油断していた。俄かに擦り減り始めた理性が叫ぶ、発作が悪化しない内に対処しなければ、と。耐え難い苦痛に抗いながら立ち上がる、つもりだった。全身を支えるだけの力を失った下肢は使い物にならず、情けなくもその場に蹲ったまま奥歯を噛み締めることしかできない。来客の声が耳朶を叩いたことにも気付けぬまま、三叉神経を焦がす電流の如き痛苦への怨嗟が胸中を占め )
…ッ、……どう、したって、こんな時に──ああ!最悪だ、こんな、最低の、ふざけるなよ、この、……!
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