名無しさん 2020-10-21 17:10:45 |
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そうなのか?私にとってはガラクタ同然の知識だが、何かの役に立てているのなら僥倖だ。けれど、そうだな、私の代わりに君が覚えていてくれるのなら…それも遠慮なく放り出せる。余計なものが無くなれば、今よりずっと研究も捗るだろう。それに、例え私に必要ないものでも、いつか君が上手く使ってくれるはずだ。
( 塵も残さず燃やし尽くしたいと望んだ認識と見聞の集積が、必要とされるや不思議と愛しく思える。とうに諦めていたものの一部、栄光に彩られた過去の残滓たる知識。その管理を、友人は引き受けるという。不要であると切り捨てられた記憶の欠片を、自ら拾い集めようとする献身に瞠目。影さながらについて回った忘却の虚しさ、やるせなさ、恐ろしさが、嘘のようにすっと引けていく。安堵と共に目を伏せ、口元には自然と微笑が滲む。真っ新な紙面の如く限りない可能性を秘めた頭脳を、ほかでもない己の為に貸し出してくれるというのだから )
なんだ、ダイアー女史はそんなことを言っていたのか?それなら、次に彼女と顔を合わせた時に伝えておいてくれ。「規則正しい食事をするよう見張っておくから、ルカ・バルサーについては何の心配も要らない」と。
( 固いパンを齧りながら、今しがた名を挙げられた第三者とのやり取りを想起する。古株の女医から気に掛けられていることは薄々、否、はっきりと認識していた。生活習慣と食事の内容について折に触れ助言を齎す彼女は、医師として他の参加者の体調を気遣わずにいられない質なのだろう。前科者たる自分にさえ心を配る彼女の思い遣りが得難く有難いものであると理解する反面、毎度生返事ばかりで自身は生活を改める気など更々ない以上、いつまでも余計な配慮を続けさせるのも酷であるという事実。医師の伸べる手が己以外の適切な相手へと届くよう、一抹の望みを胸に言伝を託し )
ともかく、今後は君の誘いを断らないよう善処するさ。何より栄養失調なんて洒落にならないし、自分を想って行動してくれる友人の厚意を無碍にはできないからな。
( 今の今まで無反省を貫き居直り続けた為か、降り注ぐ正論の数々にも痛痒を感じない。しかし破滅への一途を辿る筈の我が身が健康体を保てているのは、相手を筆頭とした仲間の助力あってこそ。多少なりとも食に関心を持つべきかという遅すぎる内省と共に、等分したチーズの一片を口へ運ぼうと )
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