名無しさん 2020-10-21 17:10:45 |
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そうか?私は気に入ったんだが。また淹れてくれよ、クレス君。
( あからさまな自責の念が滲む声音に、目の前の相手が本来真摯な人物であることへの確信を強める。荘園に招かれた参加者に十中八九後ろめたい過去が存在するように、少なくとも人倫に基づいた善行の日々を送ってきた訳ではないのだろう。だが、彼の心根が誠実であり、責任感を持った人間だということは理解できる。そして、信用と信頼に足る相手だということも。嘘偽りない言葉ながら、悔いる気持ちが和らげばという意図からささやかな要求をひとつ )
豊富な?…いや、雑然とした知識だ。取るに足らないことばかり覚えていて、重要なことはすっかり抜け落ちている。今の私の脳の容量はな、有限なんだよ、だから、こんな…こんなどうでもいいことは、今すぐにでも…忘れてしまいたいんだ。
( ある形容詞が耳を掠めたとき、ブルーチーズを切り分ける手が止まった。神経回路の構造上、脳が無制限に記憶を蓄えられることは承知している。尤も、それは正常な脳に限った話なのだが。常日頃から己の記憶障害には煩わしさを感じているだけに、ちょっとした言葉にさえ敏感になりがちだ。センシティブな自分が酷く鬱陶しい。大切な記憶を慎重に整頓して、不要な知識は屑籠に捨ててしまえたらどんなに良いか。独り言めいた声が震える中、己へ苛立ちと焦燥を理性で極力押し殺し )
まあ、そんなことはどうだっていい。君の言う通りだ!研究への没頭を省みようとは思わないが、食事にはもう少し気を遣わなきゃならない。
( 一度ナイフを置き、残ったコーヒーをぐっと飲み干す。不器用な優しさをそのまま反映したような風味に、ほうと小さく息を吐いた。駄目押しに"どうだっていい"と問題をやや乱雑に一蹴、先刻下手物呼ばわりされた件の乳製品を偶数個に等分する。理に適った友人の指摘に首肯し、固いパンを手に取りつつ思考を巡らせ )
グルコース、いや、ブドウ糖…糖分の方が分かりやすいか。この餌を補給してやらないと、私たちの脳細胞は働くことができないんだ。私は燃費が良い方だと自負しているが、食事の量とタイミングについては再考の余地がありそうだな。
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