アルバート 2020-10-07 14:22:52 |
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そう……勘違いしないでよね。私じゃなくて……アンタのファンに聞かれたの。
(アルバートの様子がおかしい、どんな時も考えたことをそのまま口にしてるかのように澱みなく話す彼が何か考えこんでいるような……私がすぐ怒るから?本当は家庭的な子が好きだけどそんなことを言ったら殴られるとか考えているのかも、と長年片思いを拗らせた思考は、彼が自分を好きになるという可能性に行きつかず、的外れな方向へ走っていく。トドメにふい、と顔を逸らされて、それだけでもかなりショックだったが、よく見えるようになった頬が耳がうっすら赤くなっていて、質問に答える口ぶりもどこか具体的で、きっと彼には好きな人がいて、その人のことを思い浮かべて話しているのだ。ガサツで満足に料理もできない自分とは違って家庭的で、頑張っている子……苦手な家事から逃げている自分とは正反対じゃないか。魂が抜けそうになる口を抑えていると呼吸が苦しくて顔が赤くなる、そこに空気を読まない父が帰ってきて呼吸を思い出したが、普段からデリカシーがないが輪にかけて最悪のタイミングの発言に更にテンションが下がり、低い声で上記を。言い回しこそ普段の照れ隠しだが、その冷たい声音は本当にアルバートに興味が無いかのようで。)
あ、母さん。私運ぶよ。
(このまま顔を合わせていると泣いてしまいそうで、アルバートをダイニングに残してキッチンへ向かうとちょうど料理が出来上がったところだった。彼に好きな人ができたのなら今更手遅れだが、家庭的で頑張ってる子が好きと知って未練がましく、盛り付けを申し出る。ポトフの鍋を持って慣れない手つきで4人分の皿によそっていると父が風呂から戻ってきた。そしてアイリスを見ると悪戯っぽい笑みを浮かべて「おお珍しいな。アルバートの前だからって格好つけて。」の珍し、まで言ったところで母に耳を掴まれて他の部屋に消えていった。さて、この家の純粋な腕力の強さの順こそ父、娘、母だが、家庭内の序列はその全く逆である。一日仕事をして腹を空かせて帰ってくると妻に殺気で風呂場に追いやられ、戻ってくれば問答無用で耳を引っ張られみっちり叱られ、散々な目にあった大黒柱がギルドでの様子からは想像がつかない程しおしおにしぼんで夕食の席に着いたのはしばらくしてからだった。「アルバートくんを待たせるから。」という理由でそれでも早めに解放されて、あまり均等とは言えない盛り付けのポトフを囲んで4人で食事を始めれば、2人が切り出す前にアルバートに向かって口を開いて。「それで、完治はいつ頃だ?渓谷に行くんだろう?」)
(はい、よろしくお願いします!)
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