アルバート 2020-10-07 14:22:52 |
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こら、前見なさい!
(マルシェの人混みの中をはしゃぐアルバートを窘めるアイリスだが、内心は引っ張られる手の温度や、周りからカップルに見えるかも、などマルシェとはまた違った理由でいっぱいいっぱいになっていて。色々な屋台によそ見している窘めつつもずっと頬を上気させてホクホクと嬉しそうについてまわっていただけに、空気を読まないひったくりへの憎悪は私情が大いにからんだ激しいものだった。アルバートのアイコンタクトに応じて路地へ飛び込むと、低くとび出たベランダや乱雑したガラクタを器用にくぐり飛び越えて、時には壁を登って駆け抜ける。街の外での活動が多いとはいえ、ギルドの冒険者は市街での戦闘すらも想定した訓練を叩き込まれる、ましてや完全なギルドのホームで小悪党を逃がすような2人ではない。ものの数分で逃げ場のない1本の路地でアルバートに追われるひったくりと正面から鉢合わせすれば、そのまま速度を緩めることなく自慢の飛び蹴りをお見舞いしてやった、いやしてしまったという方が正しいかもしれない、今日の自分の格好を忘れて。顔面にしっかりとくらって気を失ったひったくりはともかく、だいぶ追いついたとはいえ少し離れた距離にいたアルバートにはバッチリだろう、何とは言わないが。)
……ったく、このまま憲兵に突き出してやりましょ。
(自分のやらかしには気づかずに気を失ったひったくりを転がしてカバンを取り上げ、ゴミ捨て場から拝借した縄で縛り始める。せっかくのデートの時間を邪魔されたが、今からコイツを引き渡してすぐに戻ればまだ時間はあるだろう。ふと顔をあげると、アルバートの後ろで小さな子供が猫を撫でているのが目に入る。身なりやお世辞にも治安のいいとは言えない場所からも、貧民層の子供だろう、もしかしたら孤児かもしれない。どの街にも暗い側面はあるものだ。アイリスにも思うところはあるが、いちいち手を差し伸べていたらキリがない、せめてひったくりを引き渡すついでにもう少し治安のいい場所へ誘導してから戻ろうかと考えて、アルバートに視線で背後をさして提案しかけた瞬間、子供の背後からにゅっと大きな手が伸びて子供の口を覆うのが見えた。あっけないほど静かに路地の影に引きずり込まれた子供に一瞬目を疑うが、明らかにその足が目が助けを求めて暴れていて)
アルバート!後ろ!!走れ!!!
(詳細を説明している暇はない、あの角まで走ればすぐだ。その姿を見れば誘拐だとすぐわかるだろう。まだひったくりを縛り終わっていないため、多少雑になってしまうが焦って結びながらアルバートに叫んで。)
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