アルバート 2020-10-07 14:22:52 |
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……やった!!
(親方から昇格試験を言い渡されてから3週間、アルバートと違いトリッキーなことを始めたアイリスの特訓は順調とは言えなかった。筋力不足を補うために考えたそれは、魔法で空気を収縮・爆発させた勢いを動きに利用するという非常に高度なもので。確かに試す度に吹っ飛んで生垣に突き刺さっていた初日よりは成長した。ポーンポーンと跳ねるように歩けた時は感動したものの、曲がることもできず走る速度で使用すればまた生垣のお世話になるレベルで、とうとう訓練場でアイリスが生垣から生えていても気にする者はいなくなった。親方だけが愉しげに目を細めているのにアイリスは気づいていない。
それは依頼のモンスターの駆除だった。このモンスターはアルバートであれば難なく首を落とし、筋力がないアイリスでも複数の急所を突き狙うことで危なげなく倒せるレベルだったが、不意をつかれ突進してきた相手への反応が遅れた。その時、特訓の癖か地面を蹴った足に無意識に魔法がこもりアイリスの体が宙に浮いた、予測しない方向に弾かれていた訓練場の時とは違って、ふわりと浮いた体は空中でバランスをとりモンスターの背後に着地する。モンスターが急に視界から消えたアイリスに驚き戸惑っている隙を狙ってもう一度地面を蹴る、今度は浮いた体をモンスターの首の上で安定させ、位置エネルギーをたっぷり利用してその首を地面に落とした。)
アルバート、休憩?
(依頼から帰って報告をすませ、感覚の残ってるうちに練習しようと訓練場へ向かうとアルバートが座っているのを見つけて上機嫌に声をかけ。今日の成果を、唯一自分の特訓を馬鹿にせず、アイリスならできると言ってくれた彼にはぜひ見て欲しいと思いつけば、「ちょっと見てて」と答えを待たずに鼻歌交じりに座っている前に立つ。そのまま昼間モンスターを前にしたように足に魔法を込めて、助走もなしに自分の身長の倍ほどふわりと跳び上がった。レイピアも木刀も持っていなかったため、少しバランスを崩して着地はもたついたが、アルバートなら褒めてくれるに違いないと嬉しそうにほほえんでくるりと振り向いて。)
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