アルバート 2020-10-07 14:22:52 |
通報 |
そ、そう?そのね、今日は……
……ええ!そうね!それなのにアンタときたら!ちょっとこっち向いて。
(怒ったような「いつもうるさい」という言葉にショックを受けて彼に嫌われただろうかと心が怯む、冷たい言葉ばかり口にしてしまう自分への嫌悪も相まり、その大きな瞳が潤んで揺れるのを、ぐ、と飲みこんで、睨んでやる。言い返してやろうと口を開きかけたところで、彼のために時間をかけた髪型を指摘され、表情と声音が思わず緩んで。ショックと反省が心を少し素直にさせたようで、その褒められた毛先をくるくると指先でいじりながら"あなたと一緒に仕事ができるから"と続けようとしたが、続けられた鈍感な言葉に暫し絶句。じとり、とショーウィンドウ越しに手櫛で髪を梳く彼に視線をおくると、走って荒れた髪を直してやろうと振り向いて、幼馴染の癖で直接顔を覗き込むと伸ばしていた手をピタリと止めて。)
また、……また、父さんと母さんがご飯を食べに来なさいって。たまには2階にも顔だしなさいよ、2人が煩いから。
(近くから覗き込んでやっと分かる程度だが、ほんの少しだけ顔色が悪いように見えて、そう言えば彼はなんで今日遅刻しかける程寝坊したのだろう、と──"『また、』夢を見たの?"と言いかけて口を噤む。彼が両親を亡くした頃によくしていたように夕飯へ誘いながら、待ち合わせ場所に向けて止めていた歩みを再開する。彼の前でも仕事中は父を親方と呼んでいるのを、今は父さんと口にしたのは、幼馴染としての言葉だから、親2人が、ではなく自分が、と言えないのは、子供だった自分が彼のためにできたことなど殆どなかった昔から変わらなくて。)
トピック検索 |