△ 2020-09-24 18:42:18 |
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( 罵声の一つや二つ浴びせられてもおかしくないというのに最後に彼の優しさに触れ、恐怖から解放された彼女は堰を切ったようにぽろぽろと涙が零れ出すと、漸く動かせるようになった指先で涙を拭いながら何度もこくこくと頷く事しか出来なくて。毒気の抜けた彼女のぐずぐずと泣く声を背後に感じながら、洋館の扉を自ら開くと新鮮な夜風が入り込みふわりと髪が靡く。正面に用意された帰りの馬車へ向かいながら、隣に追い付いて重たげに口を開く彼を横目で見ると、宛らしゅんと耳が垂れた大型犬のようで。悪いのはこんな場所に連れて来て、危ない目に遭わせてしまった私だというのに。彼の健気さに胸が締め付けられると馬車の前で足が止まる。向き直って相手の頬をするりと撫でると「 謝るのは私の方よ。……ごめんなさいね、こんな場所に連れて来てしまった事を悔やむわ。大事な人を危険に遭わせてしまった…。 」負い目を感じており眉尻を垂らしながら、失望してしまっただろうかと不安気に瞳を揺らし見つめ )
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