奏歌 翔音 2020-08-14 23:38:38 ID:5762b1903 |
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>如月知佳さん
『そうか。いや、大丈夫だ。私自身特にお金に困っている訳では無いからな。『……なら何のために?』と思うだろうか。理由は簡単だ。この店と知佳の事をもっと知りたいんだ。此処へ入ってから知佳と店主のやり取りは気兼ねなく接する親友の様に親しげだった。……多分、知佳に限った話では無いのかもしれない。この店……いや、店主の人となりがそうさせるのか。素敵な店だと素直に思うよ。そんな店で普段知佳は何を思いどんな景色を見ているのかと、ふと気になってしまったんだ。』
そんな理由を話し始めると共に禁忌はカウンターに座ったまま先程使っていた敷物で自分の長髪を纏め始めた。
そして振り袖をポケットから取り出した黒い紐状のモノで手際良く襷掛けの様に縛ると何かを企む悪戯っ子の様な笑みを浮かべながら店主へと顔を向ける。
『……では雇用は今からさせてもらおう。一応客に出すメニューについては店主に事前に試食して貰いたい。下手なモノを出して店の評判や信頼を落とす事になる事は避けたいのでな。こちらで提供するメニューの材料については本日は持参しているから安心して欲しい。』
そう言うや否や禁忌は軽やかな足取りで厨房へと移動していく。
そして暫く厨房内を見て棚等を軽く物色し何処に何があるかを大体確認すると店主に試食してもらうメニューを何点かに絞る。
数分後
フライパンで何かを熱する豪快な調理音がカウンターや座席の方にも僅かに聞こえてきた。
初めて来た店の筈だが、禁忌の動きには何の淀みも無かった。
次第に漂ってくるほのかにいい匂いに腹を好かせている者は嘸かし空腹感を刺激させられる事だろう。
そして15分後。
厨房から出てくる禁忌の手には3つの料理を載せた盆が存在していた。
その盆は店主の前に置かれ、盆の手前には箸が添えられている。
『試食用という事で量は少なめにしている。1つ目は豚肉とアボカドのゴマ油サラダだ。』
下の敷物の役割をしているレタスと水菜は見た目からして整えられており、歯応えあるシャキシャキ感が如何にも期待出来そうである。そんなサラダをゴマ油と塩で味付けする事でサラダ単体でも楽しめそうだ。
加えてレタスと水菜の上を牛耳るアボカドと豚肉は塩のみの味付けだがサラダ部分に万遍なく掛けられているサラダ油の味付けと絶妙にマッチングしている。
敷物のレタスが両脇からまるで鳥の翼の様に広がり水菜が尻尾を表現している事から傍から見れば料理のアートに見えるかも知れない。
『2つ目はスパゲティを油で揚げた簡易の揚げ物の摘みだ。』
先程のサラダとは違い縦長のガラスコップに油で揚げられたスパゲティが詰められている簡素なもの。
味付けはどうやら塩コショウとコンソメらしく、このコンソメがこの摘みを病み付きにしているらしい。
食べて初めてメニューの良さがわかる掘り出しメニューという中々に粋な1品であった。
『最後は酒の〆にオススメ。アサリとチャーシューの塩ラーメン。』
アサリでたっぷりとダシを取ったスープの上からアサリを浮かべるというアサリの2重攻めがアルコールが回った胃に優しく響き渡る正に〆の1品。
塩の味付け自体も薄めなので〆であってもあっさりと完食できてしまいそうだ。
1つ1つのアサリも丁寧に盛り付けられており、見た目にも拘っているのがわかる。
『順番で構わない。店主。試食してみて欲しい。』
それぞれの品の説明を一通り終えた禁忌は内心上手く出来たかと少しだけ緊張しながら店主に試食を頼んだ。
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