奏歌 翔音 2020-08-14 23:38:38 ID:5762b1903 |
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>如月知佳さん
新たに発生した日本の腕と曲刀を確認した黄泉は抑え付けていた手首から手を離し曲刀を回避するべく大きく後ろへ跳躍し知佳と距離を取る。
【フハハッ、【許せない。絶対に謝らせる。】か。……【妖】よ。一体いつまで勘違いをしているつもりだ?確かに我を貫く事は重要だ。……だが強さを伴わない我など戦場において何の意味も無い。無慈悲に全てを奪われて終わりを迎えるだけ。故に【妖】よ。【強くなれ】。どんな逆境でも己が我を貫き通せる程に。そして……我を謝らせられる程に……な。少なくとも今の汝では何も守り切る事は出来はしない、それどころか大切な者を―――【また失う事になるかもな】。】
知佳がここまで禁忌に固執する事。
そして先程の知佳の言葉を照らし合わせれば彼女が過去に大切な者を守りきれなかったであろう事は容易に想像がつく。
それを認識させる事で自らの今の強さを自分自身で受け入れられれば………そう思い黄泉は知佳に忠告すると共にまともに立ち上がれないであろう禁忌の方を見て………はじめて表情が変わった。
膝をつき知佳に必死に静止を呼び掛けていた禁忌の身体からドス黒い魔力がどんどん膨れ上がっているのだから。
(『しまったっ!極黒魔がっ!?くっ!』)
そう、これは極黒魔の暴走。
禁忌の計り知れない膨大な魔力を吸収していく間に一度は知佳によって止められた極黒魔が歯止めなく魔力を吸収しながら膨らんでいってしまっている。
このまま魔力を吸収しつづければ禁忌は間違いなく助からない。
それどころか知佳さえも爆発の余波に巻き込まれて只では済まないだろう。
何とかしようにも禁忌にはもうこれ以上極黒魔が膨れ上がらない様に押さえつけるだけで精一杯だった。
【世話の焼ける奴だ。】
事態を把握した黄泉は瞬時に禁忌に駆け寄ると禁忌の体内で暴走している極黒魔を丸ごと転移魔法を駆使して体外へと排出させる。
だがその瞬間、排出された極黒魔の塊は上空へ浮遊していく。
そして………極黒魔と共に吸収された全ての魔力がまるで弾丸の雨の様になって知佳へと降り注いだ。
理由は単純
この降り注いだ魔力は全て知佳が極黒魔からの吸収を防ぐ為に霊力を魔力へと変換し禁忌へと分け与えたモノに他ならない。
禁忌が魔力の所有権コントロールを失い、行き場の失った魔力は本来の持ち主の知佳へと牙を向き知佳を殲滅する様に降り注いだのだ。
『知佳っ!?危ない逃げろっ!!!』
その光景を目の当たりにした禁忌は咄嗟にそう叫ぶ。
自分ではどうしようも無かった。
もとより身体が立ち上がる事も覚束ない程に弱々しいのだから。
そして全ての極黒魔と吸収された魔力が知佳に直撃する直前
何かが瞬時に知佳の前に割り込み
魔力の弾丸の直撃と共に大爆発を起こした。
『知佳………知佳ああああああっ!!』
事の惨状に禁忌は知佳の名前をただひたすらに叫ぶ。
あの大爆発では無事では済まない。
どんなに良くても間違いなく致命的に近い重傷の筈だ。
次第に晴れていく爆発の煙。
その煙が晴れていたそこにあったのは
魔力の弾丸に背を向け知佳ごと倒れ込み知佳を爆発から守る様に覆い被さる黄泉の姿だった。
その黄泉の姿は痛々しいの一言。
左腕は肩口から吹き飛び千切れた左腕は無惨に地面に転がっている。
そして右腹部の一部が抉れた様に千切れ夥しい程の鮮血が広がっていた。
更に頭部からも大量に流血し、顔の左半分は血に染まっていた。
そんな重傷の状態。
にも関わらず黄泉は右目をゆっくりと開き、僅かに身体を起こすと下に敷いていた知佳に対して一言だけ静かに呟いた。
【……無事か?】
自分の事などまるでどうでも良い、と言わんばかりに。
そして知佳を見るその瞳は………どことなく穏やかな目をしていた。
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