奏歌 翔音 2020-08-14 23:38:38 ID:5762b1903 |
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>如月知佳さん
『それが例えどれ程の人間の命を奪ってきていても汝はそう思うか?』
知佳の言葉に思うところがあったのか。
少しだけ表情が真剣味を増し、まるで知佳を試すかの様に禁忌は質問を投げかけた。
『我は立派で無ければまして良い人でも無い。もうどれだけの魔に関わる者の命、魂を狩り尽くしたか分からない程だ。何千、何万、はたまたそれ以上か。そして極め付けの我の能力。知佳。汝も覚えている筈だ。『森羅万象を斬る能力』。これは本来この世に存在してはならない危険な力だ。だがその力の強大さに目が眩み力を欲する者はあとを絶たない。分不相応な力を持てばその先に待つ未来など破滅以外に有り得ないというのにだ。』
そう、禁忌は桐恵に創り出されてから今日に至るまでもう途方も無い程の人間の命を手にかけてしまっている。
魔を扱う者にとっては正に文字通り禁忌であり、死神の様な存在。
だがそれでも最凶の禁忌の計り知れない力を求めて禁忌に近付こうとする輩は減るどころか寧ろ増えていく始末。
無理も無い。禁忌が持つ『森羅万象を斬る能力』は使い方次第でこの世の天地すらも揺るがしかねない程の強大かつ危険な力なのだ。
その能力を悪用しようと考える者など溢れる程に出て来るだろう。
『人に限らず、この世に生を受けた者。創造されたモノには必ず死という終わりが存在する。だからなのだろう。命に限りが存在するからこそ人はその中でより輝こうと懸命になる。そんな儚くも眩しい在り方がある一方で他者を蔑み陥れ騙し合う、そんな醜く汚れた在り方も存在する。』
その声は知佳に対して話す様でありながらまるで自分自身に問い掛けている様にも見える。
そんな儚い自虐的な笑みを禁忌は浮かべていた。
『桐恵にはわかっていたのだろう。悪の本質に。存在そのものが善、又は悪など決して有り得ない。人が口にする本当の善悪とは…………生きとし生けるものの心の中に存在する事に。』
人の心、例えるならばそれはコインである。
ふとした事がキッカケでその心は善にも悪にも早変わりするという厄介極まりないモノ。
しかしそれは言い換えるなら…………。
『人はそう簡単に変われない。そう思う者もいるだろう。だがそれは違う。心の底から変わりたいと願う限り人は変われる。…………だから我は人間達にとっての反面教師になる事でそれを伝えたい。分不相応な力を持つ事に意味など無い事を。人は変われるという事をな。』
禁忌の語る存在する意味。
それはとても悲しく切ないモノだ。
悪に染まり切った者達に誰しも善の心を持つ事に気付かせる為に自らが巨悪となるというのだから。
人の振り見て我が振り直せ。
禁忌はそれを存在そのものをもって示そうとしている。
それは想像を絶する………孤高かつ苦難の道と知りながら。
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