奏歌 翔音 2020-08-14 23:09:35 ID:5762b1903 |
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>近衛田さん、大海原疾風さん
階段を登りきった先の部屋。
石の支柱が生える部屋を満たすのは硝煙の香りと「戦争」、信念の研ぎ澄まし、そんな類のシロモノである。
そんな異質とも言える部屋で黄泉と疾風を待ち構えていたのは白い軍服に白い帽子を深く被り、首に長いマフラーが特徴の64式を1本と腰に日本刀を刺して待機していた一人の男。
佇まい、その格好からひと目見ただけでも軍人とわかる雰囲気は独特であり、ある意味で魔法とは対極に位置するかも知れない。
「____自分は人を抱えている人物を襲う事はしません。もし、特に意思のないのであればお引取りを。無闇な争いは好みませんゆえ。」
「えぇ~?でもねぇ?ほら、ボクにとってというか組織にとって?君達メーワクなんだよねっ。あ、ボクは戦えないよ?非戦闘員ってやつダネ!戦えるのはこっち(黄泉さん)だけど、君、死んじゃうよ?」
「戦場で死ぬのは軍人として出た者の末路ですから。抱えられているお嬢様は、階段より五歩下へ降りてください。避けられない戦いならば、この身をもって挑むまで。※※※帝国陸軍所属、近衛田。____上層部の指示によりこれより先には進ませません。」
疾風と相手のやりとりの中、明かされる相手の名前。
近衛 田。
その名前を聞いた時、黄泉は以前聞いたことのある名前に思考の記憶を懸命に辿っていた。
そう、その名前は今回の騒動が話題となる直前に烏丸桐恵が研究所にて何やら調べていた際に机に並べられていた幾つかの人物のプロフィールに存在していたのだ。
自身が持つ異能の力を恐れられたが故に反逆者として銃殺されかける、という過去を持つ軍人。
異能故に周囲から恐れられた存在。
それは黄泉と図らずも似通ったモノがあり、そのプロフィールを見た瞬間から黄泉自身もどこかシンパシーを感じ取っていた。
だからこそ確信出来る。
目の前の男はベリアルという悪魔に唆され、利用されているだけに過ぎないという事に。
【少し下っていろ疾風。あれだけの覚悟を示した兵には敬意を持って当たらなければ無礼であろう?】
近衛の覚悟を感じた黄泉は抱えていた疾風を下ろし深呼吸をすると重心を落とし両膝を曲げ片膝は地につくほどに。
自身の顔を前方に位置する両の拳で挟み込む様に拳を構える。
上下の民族衣装がその構えを妙に映え有る姿にしており、その構えを取る黄泉の姿は彼をよく知る者であっても滅多に見ない程だ。
その構えの武術は現在のインドネシアにて1000年以上の歴史を持つ民族武術とも云われている。
当初は王家の秘伝として王族のみが学ぶ事を許されていたが時代の流れと共に民間にも次第に広く普及していく。
当時のヨーロッパの侵略に対抗する為にジャングルファイトとして発展していき、占領下では舞踏の中に巧妙に隠蔽されながら伝承された古い歴史を持つ武術である。
【近衛田よ。先に堂々と名を明かしたその気概に敬意を評し此方も名を明かすとしよう。余は黄泉。古より魔の覇権を牛耳った付喪神。余を知る古き知人には闘神と称されておるがな。近衛田よ。武を示す前に汝に問う。汝は何の為にその力を振るう?】
対峙している者からすればまるで異型の怪物に鋭い眼光で睨まれているかの様な圧倒的プレッシャーを放たれているかの如く威圧感。
それを醸しながらも黄泉はあくまで冷静に近衛に対して構えながら質問を投げ掛けた。
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