奏歌 翔音 2020-08-14 23:09:35 ID:5762b1903 |
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【ニシの組織 本部地下 疾風の研究室】
____被害者達が増えるその頃____
無造作に置かれた様々な設計図、計算式、ゴミ箱に入りきれなくなった部屋の主専用の食事の入ったからの袋に割れた試験管や部屋の主が気に食わなかったと思われる魔法具の数々。脱ぎ散らかされた衣服、衣服。
散々な部屋の中で蠢く小さい体は首を傾げながら大きな棚の前に脚立の上で腕を伸ばして硝子の瓶を漁っていく。濃硫酸なんてものも書かれているそれらは薬品棚なのだろうか。
……その入口でぷっちーんっと輪ゴムを引きちぎる音を立てたのはその部屋の主の部下の1人であり、その世話を不本意ながらしている少女だった。
「____何アルかこの惨状ーっ!?」
少女、蘭花が叫べば不快そうに音の発生源に顔を向けてあー。と声を出す疾風が薬品棚から取り出していた瓶を戻す。
「おーランランちょうど良かったー。あのさ、僕の部屋にあったビビットピンクの液体が入った瓶入れた段ボールどっか持ってたかい?」
「ピンクよりこの部屋アルヨ!どぉーして昨日片付けたのにすぐこうなるアルか!?魔窟アルか!?」
「失礼だなぁ、ぼかぁまだ人間なんだから魔物じゃないし、ここは地下なだけだよ。」
「ハヤテの体が1番弱い分かってるアルよね!?こんな部屋にいたら余計早死にするネ!」
「んじゃランラン片付けといてー。あと段ボール。」
「もぉぉぉぉっ!!段ボール?もしかしてハヤテが郵送して置いてって書いてたアレあるか?あれならもう送ったアルヨ。」
天才でありながらがさつを極めるボスの傲慢な態度に頭を掻き回しながらも蘭花は手際よく散らばった書類から拾い上げ、質問に答える。返答を聞けば疾風はあー、と袖で口元を抑えるようにして少し考える振りをすると両腕を下ろしてニヤニヤと笑った。
「おっけー。んじゃ、今頃可愛い僕のbrotherは苦労しているだろうねぇ。んふふっ。」
「まぁた変な薬つくってたアルか?そんな暇があるなら片付けなり仕事するなりして欲しいアル。」
「ランラン、ぼかぁ仕事はしてたのさ。まさにその仕事の依頼品が間違ってmybrotherの家に運ばれちゃった訳だけどね?ま、すぐ作れるから支障はないよ。だって僕は天才だからねぇ。」
「………………。」
「いやぁ今取引してるロから始まる国のちょぉっと【偉い】男がさ、この僕様に懇願してきてねぇ。その国で人気のアイドルを恋人にしたい!だってさ。笑っちゃうよねー。でもま、これも事業拡大って事で引き受けてそれなりに出来た試作品を作ったんだよ。ま、君らからすれば完成品に近いかもしれないけど、僕から見ればまだまだってやつ。
興奮剤と脳のアドレナリンの分泌量を増やす薬にアルコールに近い成分を組み合わせて脳の理性と言われる機能を弱めて人間が普段保つストレスの許容範囲を狭める事で視界に入った人間に対して本能的にストレスを解消する為に甘えたり、さり気ない行為に一時的な好意を抱く……勿論天才の僕様が作ったものだから時間が経てば成分は検査されても発見されないし内蔵等の遜色被害、薬物依存も現れない。凡人達からいえば惚れ薬、甘え薬なんて呼ばれる代物さ。1本●●●で買うって言うから凡人には難しかったろうけど僕の手にかかればちょちょっと大量生産。そんで一括で送ろうと思ったわけだよ。____まぁランランが誤送したんだけどねっ!!」
「____アイヤァァァァァッッ!!!!」
つらつらと言葉を述べこれ以上ないほどの笑顔を見せつけた疾風に対して、ニシの組織の中では慟哭がひとつ響き渡った……。
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