酒井 2020-07-23 16:24:32 |
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随分と愛されているんだな俺は…嬉しいな。堪らなく愛しい気持ちで一杯になる。
恥ずかしがる君も愛しいな、何時も余裕そうだから少々…得をした様な気分だ。君の新しい表情が見れて嬉しいぞ。
怪訝そうに眉を寄せたあと今度は気でも触れたように楽しげに笑い出す彼に困惑し固まる。そうだ、と、普通こんな状況に陥れば叫んだり逃げたり震えたりするものだ。なのに、目の前の男はそんな素振りを一切見せない、混乱していた脳が徐々に冷静になっていくのが分かる。約束する、と言った彼の表情は少々茶化すようで、まるで新しい玩具を貰った子供の様に瞳は輝いていた。それはあまりよろしく無い事だ、恐れていないのであればこんな口約束はすぐに破綻する。振り解かれた腕をもう一度掴もうとした…ところで止める。目の前の彼が死体を担ぎ上げていた、一瞬何が起こったのか分からなかった。見るのでさえ躊躇するような物を平然と持ち上げ、普段友達に話しかけるかのように俺に話しかける。鈍い俺でも気がついた、こいつも普通じゃない、と。「どう言うつもりなんだ」彼の後ろから声をかけた、この死体をどうするか、分からない上このまま放っておく事もできない。掴み所のない彼の意図が分からないままついて行く。ふと、こうやって一切隠さずに運んでいるのだから本当に近いのだろうと考えるが、どうしても安心する事はできない、まだ少し手が震えていた。
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