伊吹 2020-07-17 22:35:08 |
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やりません。もう俺の食べ物は分け与えません。
( 相手がそう言うから余計に意地を張りたくなる。そもそもその行為に意味を見い出せずにいるのだ。だからこそ、相手の言葉に流されてしまうかもしれないという予感はあったけれど。「別に高級な店に行きたいわけじゃない。からかってるだけだ。察しろ」あからさまにいじける相手にこれ以上打撃を与えるのは不毛だと感じて、己にそんな意志は無いということを短く告げる。自分の言葉で一喜一憂する姿は目まぐるしく、初めは面倒だと思っていたが今はもう慣れたし、寧ろそれを心地好く感じることさえあった。ナプキンに手が届いた刹那、口端へ伸びてきた手に体を硬直させる。その行方を視線で追いかけ、あろうことか相手の舌がそれをなぞる姿にぎょっと目を見開き。驚きと、僅かな背徳感のようなものを感じながら、その妖艶さに目眩がする。「ばっ、か、おま、ちょ……ッ!」何をしてると声を上げる前に、続いた行為にむず痒さを感じて言葉を飲み込み。信じられない。相手の行動も、それに嫌悪を感じていない自分も。「汚いだろうが!子どもでもしないぞ、そんなこと!」大きな声を発する事もできず、精一杯抑え込んで相手を怒鳴りつける。急いで手を引き、少し湿り気の残る掌を紙ナプキンで拭うと、「ドライヤーは無し」と冷たく言い放ち食事を再開して )
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