山椒魚 2020-07-02 22:53:04 |
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透
有難う御座います。
( 先程とは違って静かに開かれた扉。彼と視線が合うと軽くお辞儀をしながら礼を述べ、トレイを持ったまま部屋の中へ。時間を置いたことで落ち着いたのか普段の振る舞いへと戻っていて、意地悪な言葉に対して少しばかり頬を膨らませて「 焦げた方が博士の好みでしたか。 」と言い返し。机の邪魔にならない位置にトレイを置くと彼の方に振り返り、笑みを浮かべた。「 冷蔵庫の中身、勝手に使っちゃったので、今日、食材買ってきますね。 」一人暮らしのせいか、普段の生活のせいか、驚く程彼の家の冷蔵庫には何も無かった。自分の中では食材を買う事は既に決定事項になっている。彼が断ろうとも食い下がるつもりだ。にっこりと微笑んだ顔からもどう思っているか察する事は容易だろう。ふと、昨日聞きそびれたことを思い出し── )
そういえば、今度のお休みって何時頃ですか…?
煉獄
( 彼女の頬を伝う涙に気付き、強く言い過ぎてしまったと思えば「 言い方が少し強過ぎたな、すまない 」と素直に謝罪の言葉を紡ぐ。眉が下がり、反省している顔は弟の千寿郎に瓜二つなのだが、自覚は無いようだ。彼女から怪我の具合を聞き、そこまで酷くは無いと知れば「 そうか、それならば良かった! 」安堵の笑みと共に左記を述べ、足に力を入れて立ち上がる。彼女が空腹を覚えているように、己もまた空腹を覚えていた。「 話は終わりだ! 」疲れているだろうから、早くご飯を食べさせて休ませてあげようと考え、話が終わりである事を告げて、部屋の戸へと手を掛ける。開く音に混じって背後から聞こえた言葉に一瞬動きが止まり、沈黙が部屋を包む。「 ───俺も同じだ。 」数秒後、後ろを振り返ると明るい笑顔で笑って見せた。己が生きているのも、この家で帰りを待っていてくれている人が居るから。彼女や家族が居なければ、今頃、殉職していてもおかしくはない筈で。残ってしまった傷跡に触れるように腹部に手を当てると、「 行くぞ!千寿郎が待っている!! 」空気を変えるように声を張り上げ、先に朝食が並べられているであろう場所に向かって。 )
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