山椒魚 2020-07-02 22:53:04 |
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シュタイン
この数日でよくもまあこんなに。( エスパーかと、問われればそれは全く違う。職業柄、というものだろう。あとは、きっと彼女が少し特別だからでもあるとは思うが、それは考えないでおく。彼女の問いに答えることなく手を離しては横に並び、シンクに片肘置いては頬杖をつけば彼女を横目で捉えて「 強く、ですか__何のために? 」まるで彼女の答えを探るような言い方をしてみせる。死武専生が強くなる理由など人を守るだとか、デスサイズになる、育てる、だとか。そういった類いのものが普通、というより大体がそうなのだろう。きっとそれは彼女も同じかもしれないが、それなら何でそんなに躊躇ったような、絞り出したような声で言うのか気にならないわけではない。職人としても、教員としても把握すべき事柄でもある。ただ__「 まあ、あんまり無理はするな、とだけ言っておきましょう 」それは彼女が答える前に告げられる。彼女の答えを聞くのは今じゃない、と直感で思ったから。先ほどまでの空気と打って変わって、緩いいつもの表情へと戻れば、体勢を起こして彼女の頭をポンと撫でてやり言い逃げするかのように台所を後にして )
曇 瀬名
___はい。( 部屋に入れば座るよう促され、言われるままに彼の前で正座をする。先ずはお褒めの言葉に頬が緩む。彼の言葉は真っ直ぐが故に嘘偽りがないから嬉しいのだ。「 有難う御座います 」小さく頭を下げて礼を。でも次の瞬間、大きく見開いていた彼の目が細くなるのがわかって思わず目を逸らす。無傷、ではない。だが着物でごまかそうとしている自分の気持ちを見透かされたみたいで肩が震える。何か答えようと口を開けた瞬間、自身の名前を呼ばれる。跳ねる肩、普段から笑みが絶えることのない彼だからこそ焦る。これは本気のやつだ。冷や汗が気持ち悪く背中の布を濡らしていく。嫌な感じだ、表情があまり崩れない自分でも少し嫌な顔に変わる。続く言葉から何とか逃れたいと思いながらも、彼の視線が、圧がそれを許してくれない。こんなところで嘘をついてもすぐバレれる、というよりきっとこの人は気付いているのではないかと思ってしまう。小さく口を開いて「 杏寿朗さんと離れたくなかったんです。すぐに帰りたかった。__無茶をしました 」ぶつぶつと駄々をこねる子どものように理由を話す。怒られるかと再び顔を上げれば彼からの言葉に安堵し、大きく頷いて )
忘れるわけがありません!
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