山椒魚 2020-07-02 22:53:04 |
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透
シュタイン博士…?
( 珈琲の用意をしていると、後ろに感じた気配。此処に住んでいるのは彼しかいない。お腹でも空いたのだろうか?「 珈琲、もう直ぐ出来るの、で……。 」待っててください、と続けるつもりだったが、途中で言葉は失われた。何が、何が起こって…。混乱していく思考。それもその筈、何せ、急に身体を触られたのだから。羞恥心を煽られ顔に熱が集まっていく。きっと、今の私の顔は誰から見ても真っ赤なのだろう。硬直してしまった体は、なすがままにされていたものの、彼の一言でその硬直が溶ける事になる。「 シュタイン博士ってエスパーか何かですか? 」嘘でも言えばよかったのだが、今の彼女にそんな考えは思い付かず、言い当てられたことに純粋に驚いていた。肌に触れる手が少し擽ったい。痣まで知られてしまったか…。「 ……それくらい、直ぐに治りますよ。 」バツの悪そうな顔で呟いた。「 強く、なりたかったんです。 」絞り出すような声で、それだけ言うと身を固くする。貴方の為に、と言ったら怒られてしまうだろうか? )
杏寿郎
( 彼女が立ち去るのを見送ってから千寿郎の元へと顔を出し、朝の挨拶を交わす。鼻腔を擽る香りに食欲が刺激される。「 うむ、良い香りだ! 」きっと、味も美味しいのだろう。と考えながら弟に労いの言葉を幾つか掛け、手慣れたような手付きで手伝い始めた。父親が酒に溺れるようになった時から瀬名が来るまでの間、家事を弟と分担して過ごして来たお陰で、ある程度の家事は出来る。まぁ、今までは任務で家を開けることも多かった為、殆ど千寿郎にやってもらっていたのだが。そういえば、弟も彼女の事を気にしていた事を思い出し「 瀬名が帰って来たから今日は久々に揃って食べれるぞ。 」彼女が帰って来たことを教えてやる。やはり、無事に帰って来てくれた事が嬉しいのだろう。笑顔を浮かべて喜ぶ様に伝えて良かった。と密かに思った。──さて、そろそろいかねば。「 千寿郎、後は任せる。 」手伝いも殆ど終え、弟の頭を一撫でした後、厨を後にして向かったのは自室。少し経ってやって来た彼女に座る様に促し「 嗚呼、今回の任務、良くやった。 」先ずは労いの言葉を笑顔で掛けた。「 だが、無傷では無いだろう。 」少しだけ目を細める。何度も、何度も、鬼殺隊の任務をこなして来た。鬼を狩った。救えた筈の命が潰えていく様を何度も見た。───鉄錆、血の臭いだ。彼にしては珍しく険しい顔で「 瀬名、 」一言、彼女の名前を呼んだ。「 今回の任務は、瀬名ならば大丈夫だろう。と考えていた 」静かな声で言葉を続ける。「 任務の最中、何を考えていた? 」逃がさん、と言うように彼女の瞳を見据える。彼女が怪我をしていることに気付かない筈が無かった。鬼殺隊は、死と隣り合わせの場所だ。鬼が強くて怪我を負ったのならば、ここまでは言わない。実力を、彼女を信じているからこそ、今回の彼女の怪我は不自然に思うのだ。しかし、あまり責め立てるのも彼女を傷付けてしまうかもしれない。 )
──呼吸を用いての止血は良く出来ている。俺が教えた事を覚えていたのだな!
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