夢の扉　(　募集　)　

有り難う、メラクさん。漸くやるべき仕事が片付いたから、置かせて貰うわね。それにしても……メラクさんってば、無意識なのが怖いわ。(　気恥ずかしく思うとすぐに視線逸らし　)貴方や皆さんに会えて良かった。こんなに考えてくれる方の厚意を無下には出来ないもの。私も大切にしたいと思っているわ。(　両手をそっと合わせて控えめな笑み浮かべ　)
今年はいつもよりも暑い気がするけれど、貴方は大丈夫？溶けてしまっていないかしら……なんてね。


◇槙田莉緒

まあねー……確かに凄い大きいけど、結構皆仲良しなんだよ！僕のクラスはあんまり変わってないかも。担任も去年から変わらずあの人だし、つまんないなって。
(　柔らかな笑みに反し、告げられたのは悲しい事実。明るい彼女のことだ、勿論すぐに馴染んでしまうのだろう。それでも初日から話せそうな友達が全員別クラスとなれば、少なからず寂しさや心細さはある筈で。寂寥感の湿っぽい雰囲気は嫌いだ。あまり気にならないようにときわめて明るい声色で彼女の言葉を否定、首をゆるゆると左右に振る。表向きはきらきらした日本の首都といえど、その実情が大して代わり映えのしない毎日だなんて期待外れだろうか。それでも新しい風の吹いた今学期は面白くなりそうで、わくわくしてくる。話が大好きなものへと及ぶと楽しくなってくるのは必然。うんうんと頷きながら身を乗り出し、テンション高く語ったところで聞こえてきたのは担任の咳払いだった。自身の名を呼ぶ声に、クラスメイトから集まる視線。これはやばいなとさすがに察すると、そのまま勢い良く頭を下げて。勢い余って机にぶつけてしまえば、笑い声が上がるのもまた当然のことと言えるだろう　)
だよねえ、僕もスルー。えっと、僕はね、軽音部！ギターとボーカルやってるの！！こう、ばばーんってなって、じゃーんってするのがすっごく楽しいんだ！──あっ、すみません！……いったい！！



◇桜田煌

ちょっと、ひどくないですか？僕は本気で悩んでるから此処にきたのに……それをそんなに笑うなんて。
(　反応を窺うようにぽつりと溢した願いに対し、かえってきた反応は頼もしい薬の話でもなく、つっぱねるわけでもなく、爆笑ともとれるような笑い。これではどうしようかと躊躇った自分が馬鹿みたいではないか。頬をぷっくり膨らませると怒っていますよ、と雰囲気を醸し出し。さすがに此処から出ていくことはしないけれど、対応が酷かったと後で吹聴してやろうか。腹黒い本心は包み隠しておいて、あくまでも彼女の瞳をじっと見据え。やがて出てきた液体は紫色。毒ってこういう色をしているのではなかったろうか。やばそうだなあとひきつりそうになる表情筋を和らげ、話をしっかり聞こうと膝の上の両手を重ねてあわせ。告げられた内容は、一言で済ませてしまえば願いは叶わないということ。勿論そんなに甘くはないだなんて、わかっていたけれど。となれば残る方法は後ひとつだけ。恥を忍んで口に出したのは、彼女に助けて欲しいとの懇願の意。アイドルが聞いて呆れる、そう言われても仕方ないだろうが、藁にもすがる思いである。思わず身を乗り出し、上目遣いになるのはオンでいるときの癖。「だめですか？」と駄目押しのようにこてんと首を傾げてみて　)
暗記でどうにか……ううん、だめだ。僕が出来なくてピンチなのは英語だから。それ以外はそんなに問題ないのに、英語だけは見ているとくらくらしてきちゃうんです。だから──アネット先輩さえ良かったら、僕に勉強教えてくれませんか？