とある設定厨(翠亞) 2020-05-27 18:59:10 |
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(――声は届かない。シミターを手にしたウィアドは、真っ直ぐに地獄の渦中へと駆けていく。対して、その場を動こうとはしないナニカが告げた言葉は、果たして誰へと向けたものなのか。恐れているのは彼女、抗っているのは彼、"ヒト"であるのは彼女だが――或いはそれは、世界すべてに対する布告なのかもしれない。天地鳴動の厄災を自称するナニカは、確かに、天と地とを揺らし、今にも引き裂こうとしているのだから。駆け抜ける勢いと共に振り翳されたウィアドのシミターは、両刃剣によって弾かれ、伸ばされた白い手がいとも容易くウィアドを捕える。シソのシモベ――始祖の僕、だろうか。先ほどもナニカが口にした言葉だが、それの意味するところは分からない。ただ、ナニカがソレを忌み嫌っている事は分かる。事実にしろ誤解にしろ、ソレと認識されているのならウィアドが危ない――そんな思考はしかし、彼らを呑み込む白銀の光と、周囲を襲う衝撃に掻き消されて)
ウィア――っ…く…!
(彼の名前を呼ぶより早く、光の柱から同心円状に広がった衝撃波が襲い来る。防御も受け身も間に合わず、そのまま背後の木へと背中から叩きつけられれば、肺の中の空気が強制的に吐き出されるような感覚と、骨が軋むような衝撃に、イングリットの視界は暗転した。最後に見えたのは、二度と忘れることなどできないであろう――何処までも、地獄のような光景だった)
***
(遍く大地を照らさんばかりの陽光が降り注ぐ中、大木へと背中を預けたような状態のイングリットの睫毛が幽かに震える。次いで僅かに瞼を押し開いて瞳を覗かせては、眩しい程の光に目を眇めた。思考が上手く纏まらないし、少し身じろぐだけでも体が軋む。一体何が、何で、どうなって――そう、そうだ。彼は、ウィアドは――?その姿を求めるように顔を上げようとした瞬間、地を踏みしめる足音が耳に届いた。緩慢な動きで顔をそちらへと向ければ、受けた衝撃で解けた髪が肩から滑り落ちる。ようやく光に慣れてきた浅葱の瞳が見上げる先。霞む視界に映ったのは、長年連れ添った相棒ではなくて、フェドラを被った一人の男の姿だった)
――……だ、れ…?
>■分岐②:フェドラを被った如何にも探検者風貌の男
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