翠亞 2020-05-25 00:34:01 |
通報 |
???:
――。
( 互いを庇い合うような二人のやりとりを眺め、ナニカは至極複雑な――哀しみとも恨めしさとも切なさともとれる表情に眉を歪めた。静かに目を閉じ、数秒してまた瞼を上げる。それはまるで、怒りを取り戻そうとしているかのようで )
ウィアド:
馬鹿、リディア…ッ!
( 背を押されたのは予想外だった。彼女が何を考えているのか分からなくて、思わず口から悪態が零れる。こんなに何年も傍にいるのだ、彼女がナニカに向けた視線に己が喉から手が出るほど欲してやまない熱情が宿っているのを、決して見逃すわけもなく。後方からの衝撃に備えていなかった身体は、亜人の膂力で押されては思いのほか大きく体勢を崩し、よろめくように数歩、刹那求めるように愛しい名を呼んで―― )
( ――瞬間、閃光。ウィアドがリディアから離れた瞬間、ヴンと音を立てて魔法陣はウィアドを追う様に彼の足元にのみ展開され。そのまま円柱状に魔法陣から白銀の光が天を穿つように放たれ、同時に不可視の衝撃波がナニカを中心に波状に広がった。それは防ぐ術のない暴風のごとく、軽々と君を吹き飛ばしてしまうだろう。そうして後方にあった瓦礫か岩か木か、いずれかの物体に叩き付けられ、君は意識を失うだろう )
↓ ↓ ↓
???:
……アラ、マア。随分派手だこと。
( はんなりと優雅な女の声は、このトウィリト村の惨状を目にしてもどうにも緊迫感に欠ける。この大陸上の文化では大変珍しい、和風な召し物を身に纏い、墨のような漆黒を簪でお団子に結い上げた女は、ふと地面に横たわり意識を失っている君を見つけて歩み寄り )
モシ、そこのお嬢様。ご存命なれば目を開けますれ。
( 夜は明け、太陽は完全に昇り切っている。清々しい陽光は、その輝きをもって壊滅した村を容赦なく照らし上げている。周囲にナニカの姿はなく、ウィアドの姿もない。残されていたのは、25cmほどの大きく黒い艶やかな羽根。それは地に抜け落ちるようにただひとつ取り残されており、ナニカの背から生えていた黒翼の欠片に似ていた。それが落ちているのは君が手を伸ばしても届くか分からない距離、何ならこの謎の女の方がそれに近い。そして女はちょうど羽根の存在に気付き、「 マア、大きな羽根だ事 」とそれを拾おうと手を伸ばしかけて )
( / いえいえ、お役に立てて良かった。さてプロローグは終了、いよいよ本編の幕開けだ。これから先は重要なNPCがたくさん出てくるから、登場人物が増えてきたら適宜まとめを上げさせてもらうから心配しないでね。)
トピック検索 |