翠亞 2020-05-25 00:34:01 |
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「──っ!」
( はっと夢から醒めたような感覚だった。心地よく幸せな空間から、無機質な現実に引き戻された寂寥感。その切っ掛けとなったのはウィアドの緊張した声と、掴まれた腕。熱に浮かされていた思考が少しだけ冷静さを取り戻した様な気がした。頬は場違いにも火照っているし、心臓もドキドキと普段よりもずっと早く打っているけれど。少なくとも、足はそこで止まった。あの美しいひとは酷く冷たい目をしている。どうしてか分からないけど、自分達が気に入らないみたいだから、あのまま進んでいたら命が危なかったのは間違いなくて。それでも良かったのに、なんて考えた瞬間──轟、とまるで雷が落ちたかの様な音に体を竦めた。怒っている。あのひとが、何かに感情を荒立てている。その対象がウィアドだと気がついて、ちりりと胸の奥が焦げた気がした。─始祖が何なのかは分からない。共に旅をしてきた自分がそうなのだから、ウィアドもきっと本当に知らない筈。でも、あのひとはウィアドを見ている。本人が知らないだけで、彼は始祖の僕だったりするのだろうか。それで、あのひとに興味を持たれているのか。そんなの、そんなのは──どうしようもない感情がぐるぐると頭の中を回っていた時、逃げろ、という声に勢いよく顔を上げる。いつの間にか守られる位置に移動していた、その事にさえ歯痒さを覚えて、目の前のウィアドとその先で冷たい目をしているあのひとを見上げる。そんなのはダメだ、と思った。ウィアドは本当に優しくて、旅の途中で困っている人を見つけた時には何の打算も持たずに手を差し伸べていた。その手を一番取っていた筈の私が、間違いなく命の危険に晒されている彼を見捨てる様な真似ができるのか。─それに、彼しかあのひとに見られていないのに?そう考えた途端、じくりと黒い感情が心に滲む。このまま二人ともあのひとによって死んでしまうんだろう。村の人たちがみんな死んだのだから、居合わせた自分たちだって助かる道理がない。それなら、せめてあのひとに見られないまま死ぬのは嫌だ。十把一絡げのままではなくて、せめてウィアドの様に何かを向けて欲しかった。哀れみでも、怒りでも、何でもいい。あのひとに、私を見てほしい。そんな単純な衝動で。彼が奇跡を手に入れた時、自身はそんなものが宿ることはなかったけど、代わりに手に入れた力。それで魔法陣の外へと行くように背を押して、ウィアドが助かってほしいという気持ちも確かにあったことに少し安堵する。そうして自分でも驚くほど平坦に声をかけた )
「…ごめんね、ウィアド。逃げるなんて出来ない。」
【先の方も折角だからお返事したかったのだけどあまりにも長くなってしまいそうだから切らせてもらうね。もちろん、読ませて貰ったから。それと、村の名前はもう間違えない、と思う…恥ずかしい…穴があったら埋まりたいけど、無かったから掘りたいぐらい。本当に素敵な世界観なのに読解能力以前の問題でごめんなさい。本当に愛想を尽かされないで貰えると嬉しいです。
更新通知の登録、早速してみたから次からはこんなに返信が遅くなることは無いと思う。教えてくれてありがとう。
これ、普通のと違ってRPGの選択肢みたいですごく楽しいし、折角だから丁寧に選んでいきたいな。】
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