翠亞 2020-05-25 00:34:01 |
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「あ、ありがとう、ございます…?」
( 響きを殺して笑う彼女の様子に首を傾げつつも、褒められたものには素直に礼を返す。更に続けられた"月魔の王"、それを心の中で呟くと掌の上の羽根へと目を落として。澄んだ紅の瞳と、様々な感情が入り混じった様なあの表情─思い出すだけで、しんしんとして、寂しいもの、痛むものが心臓を掴み取る。やり場のない感情から逃げる様に目を伏せた。 )
「クレナイさん、ですね。…そんなに凄いものだったんだ。そう言えば彩銀石も今までに見たことが無い程真っ赤でした。初めにすごく大きな音と空を裂きそうなほどの火柱が見えて、その後ここについたけど手遅れでした。…?」
( 無力感に小さく息を吐いて、そこで微かに違和感を覚える。先ほどの彼女の言葉、まるでウィアドの事を知っている様な口振りだった気がする。その事を指摘するタイミングを逃したまま、けんきゅうしゃ、と耳慣れぬ言葉を口の中で転がしながら、流れるような仕草で傘が立てかけられるさまに見惚れて、誘われるまま素直に腰を下ろすり隣に座った彼女の言葉に静かに耳を傾けながら次々と告げられる情報に追いつこうと一つ一つ言葉を選びながら紡いでいった。 )
「…月魔の王はウィアドの事を始祖の僕と呼んでました。その始祖にすごく執着しているみたいで──ウィアドがいたから、後はどうでも良かったとか?」
( と、そこで自分が生きている事が不思議だというクレナイの言葉に緩りと首を傾げる。あのひとはどうにもウィアドの事を気にしていたからそれ以外はどうでも良かったのかと思っていたが、違うのだろうか。 )
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