名無しの部族 2020-05-02 02:16:19 |
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(何を話しているのかがわからない。言語の理解が追い付かないと言う事が余計な恐怖を煽っているようで、引っ張られるままに足を進ませながらも何度か繰り返された″トラ″と言う響きを記憶して。状況が追い付いていない中で連れてかれる恐ろしさ、見えぬ道を進んでいくような恐怖に小心者の心臓は破裂してしまいそうな煩さを刻む。時折、風に乗って届く生臭さがより一層の恐ろしさを見せつけるようで捕まれる手を握り返すことも振り払う事も何もできず、ただ操り人形のように引っ張られるのみで。最後の力を振り絞るように足を動かし、引っ張られていた腕が手放されたことでほんの少しのよろけを見せた後に自分が過ごしていた場所とは違う穏やかな空間に息を飲み込んで。塩っ辛い水ではない、それは飲む前から感じ取れる。脱水を起こしかけていた体は吸い込まれるように川へと足を近づけて、よろよろズリズリと足先を引き摺り倒れこむように膝を折れば懇願するほどに欲していた川の水を浴びる様に口へ運び。両手で掬い上げた水を零してしまわないようにゴクゴクと喉の音を上げながら何度も繰り返して飲み込むと、朦朧としていた意識が少しばかり鮮明になった気がする。口を伝った水を裾で拭えばフーと長く細い息を吐いて頭を抱え、この場所へ誘導してくれた得体のしれない原住民が離れている訳が無いと言う現実にどう立ち向かうべきかと考えを巡らせて。その中で肉を引きちぎるような生々しい音が聞こえ、その音にサァと血の気を弾かせれば抱えていた腕をだらりと落とし。恐る恐るとその音を探る為視線を向けかけた時に大きな声がぶつけられると、露骨に肩を揺らして恐怖心を表へと出し。ひいと息音を悲鳴のように零して見開いた眼で相手へ顔を向けると『───う゛……っぷ』向けられた肉の血なまぐささに、堪えられず口を覆い隠せば補給したばかりの水を嘔吐してしまわないように堪え。食えと言っているのか、生肉を?食えるわけ無い、でも断ったら?気を悪くする?殺される?。一瞬のうちにグルグルと考えが巡り『気持ちだけ受け取るよ、有難う。水場を教えて貰って助かる』頭をほんの少しだけ左右に振ることで控えめな否定を示してから、川を指さし感謝を示すべく両手を合わせてお辞儀を見せる。身振り手振りで敵意が無い事を現せば気を悪くしてしまうと言う一番の恐ろしさを頭の隅に置き、殺されないためにはどうにかして親近感無いし愛着なり親密さを築かなければ、そんな浅ましさで自らの事を指さし『トラ。ト・ラ。俺の、名前。トラ。トラマル。』と同じ単語を何度も繰り返すことで自己紹介を行って見せて)
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