案内人 2020-04-25 21:35:41 |
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是を返した先の光景も当然非現実的で、面倒ごとを嫌う頭は既に無駄に考えることを放棄し、「ああ、少なくとも40近くまでは寿命があったのか」などと他人事のようにぼんやりと自らの人生を憂い。身を纏う倦怠感に気を逸らされつつも相手の言葉をどうにか聞き取るが、矢張り要領を得ない。闇へと体が溶け、霧散した後に残るのは銀色のペンダントのみ。月光が反射し煌めくこれに、20年分の人生の価値があるらしい。
留め具をぱちりと付け直し、首へと掛けてみた。見られてはいけないとのことなので、セーラー服とインナーの下へと潜り込ませると、肌へと触れる冷たい金属の感触に小さく身が震えた。これでいいのだろうか。
さて、どうしたものか。あんなにも奇怪で胡散臭い存在でも、この未知の場所に一人で放り出されるよりはずっとマシだったらしい。何もしていなければ本当におかしくなってしまいそうで、戸惑いを覚えつつも足は何処かへと向かいたがっている。
周囲を見渡し、視界に捉えた光に眉根が寄った。光がある場所には誰かが居るのだろうか。理性など皆無。拐われるか、喰われるか。男の言葉が脳裏を過る。誰かに会いたい気もするが、死にたくはない。明かりの灯らない歪んだ木へと爪先が向く。昼行性の本能が、暗闇へと進むことに恐怖を覚えた。
→ 左の方が良いだろう
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