限界夢女子 2020-03-02 23:31:26 |
通報 |
( キングズ・クロス駅を過ぎ、それなりの時間が経った頃。とあるコンパートメントの一室には、静かに眠る少女が居た。列車が、がたん、ごとん、と音を立てて揺れる度に、彼女の頭も共に揺れる。軈て、ごつん、と鈍い音が鳴り、その後を追うように「痛い!!!」なんて少し大きめな声が小さなコンパートメントの中に響いた。その声の発声者は先程まで寝ていた少女───ひなのである。涙目になって、左側頭部を片手で抑えている様から、彼女が壁に頭を打ち付けてしまったことは明らかだった。小さな呻き声を漏らしつつ何度か頭を摩ると、窓へと視線を向け、目の前に広がる景色に「嘘でしょ…」と言葉を溢す。然し、何度瞬きしても降りる駅まで、後もう少しで到着してしまう現実に変わりはなく、こんな時間までぐっすりと眠っていた事に驚きを覚えた。「急いで着替えなくっちゃ、」左記を呟けば、誰も居ないことを良いことに、その場で着替え始めていく。異変に気付いたのは制服に着替え終わった頃だった。「──列車が、止まってる?」そう、列車が止まっているのだ。窓の外に広がる景色は何故か薄暗い。嫌な予感がする……そう思った瞬間、今度は照明が落ち、室内は暗闇に包まれた。掻き立てられる不安を押し殺して手探りで杖を取り出すと「ルーモス、」そう呪文を唱えて杖先に灯りを灯す。吐いた息が真っ白に染まって空中に溶けて消えた事から、気温が急激に下がっていることを知り、杖を強く握り締めた。あまりの寒さに体が震え、歯がカチカチと音を鳴らす。どうするか策を考えていた時、急に扉の方から大きな音が聞こえ、直ぐ様、杖先を其方に向けて構えた。けれども、そこに人の姿は無く、それを確認すると無意識に気が緩んだのだろう。杖先が僅かに降ろされた、正しくその瞬間だった。先程迄の寒さが可愛く思える程、辺りが冷え込み、空気が凍り、息を詰まる。闇の中から、ゆっくりと、静かに姿を表したソレは、彼女を畏怖させるには充分な存在だった。ソレの名は吸魂鬼、昔、親から教えて貰ったことがある。「な、んで…」こんな所に、と続けようとしたが上手く言葉を紡ぐことが出来ない。追い払わなければ、そう本能で感じたが守護霊の呪文はまだ習得しておらず打つ手がない。ジリジリと後ろに後退していくが、軈て壁にぶつかってしまい、目の前に見えるのは、すぐそこまで迫った吸魂鬼の姿。嗚呼、逃げられない。そう感じて頭に過ぎったのは”死”ただそれだけだった。生気が少しずつ吸われていく、幸せな記憶が、大事な教授との思い出が遠のいていく。涙が頬を濡らし、嫌だ、と強く感じ、勇気を振り絞って息を吸う。「助けて…!」途切れることは無かったが、声量は小さい。今度は大きく息を吸って、口を開く「誰か、助けて…!」と再度紡がれた救いを求める声はコンパートメントの外にも聞こえた筈で、 )
( / お言葉に甘えてやり取りは一旦蹴りますね!取り立てず、初回投げときます。読みづらい、嫌いなロルがある、等諸々あれば書き直しますので遠慮なくご指摘をお願い致します!!( 蹴り可 ) )
トピック検索 |